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一泊二日の遠征(1)
その知らせは突然だった―――
◆◇◆◇◆
「ラズ様、明日から一泊二日でクオーツ様と共に郊外への遠征が決まりましたよ~」
「え……めんど…クオーツ一人で行けばいいじゃん。僕は留守番希望」
「護衛は騎士団長が指揮を務めますけど?」
「マリン!さっさと準備するよ!!!」
だらけて寝そべっていた長椅子からバッと飛び起き、きゃっほーいっと衣装部屋へと駆け込む僕の後ろをついてくるマリンの呆れ顔はもはや視界にも入らないくらい完全に浮かれていた。
「合法的に一晩中ラルド様のお姿を眺められるぅ~るるるぅ~」
「……単純だなぁ」
もう一度言う。
完全に浮かれていた。
勤めを終え部屋に戻ってきたクオーツにも呆れるレベルで。
*****
あっという間に迎えた出発当日。
王城の前には護衛を務める騎士団員十数名が馬を従えズラっと整列し、その先頭に立つ騎士団長ラルド様は普段の制服とはまた違う黒の外交用軍服に身を包みいちだんと輝いていた。
そんなお姿を、ほえぇ…と眺める僕もまたお出かけ仕様の小綺麗な格好で同じくお出かけ仕様のクオーツに腰を抱かれながらちょっとした出立式に立ち会っている最中。
今回付いてこない年寄り重鎮が何かしらツラツラと述べているが、終始ラルド様を見るのに集中し全く聞いていないうちに、気付いた時には「ラズ行くよ」とクオーツに声をかけられ終わった事を知った。
目的地の郊外までは僕とクオーツ、従者としてトールとマリン、そしてラルド様を初めとした騎士団員十数名のまぁまぁな御一行で向かう。
クオーツと二人、座り心地最高のソファが完備された豪華な馬車に誘導され、乗り込むのを見届けたラルド様が綺麗に一礼をするのに合わせ後ろの団員たちもそれに続く光景が圧巻だった。
大人数を従えるラルド様かっこいぃ…
「それでは陛下、ラズ様、これより我々騎士団が安全な旅路に努めお供させていただきます」
「頼んだぞ」
奥に座った僕はクオーツの陰に隠れ誰にも見えないのをいい事に、偉そうに答えるクオーツに思いっきりけっと歪んだ顔をお見舞する。
それをしっかり目の端で捕らえるクオーツは苦笑を漏らすと、なんととうとう頭が湧いたのか、自分の背中が陰になるのをいい事に、ちゅっと触れるだけの口付けをしてきたのだ。
「!?!?」
「ふふ、可愛い顔だったから、つい」
突然のことに驚き、目を白黒させながら離れていく憎たらしい顔をただ見送るだけになってしまった。
まだ扉が開いてんだろぉぉぉ!?
ラルド様に見られたらどうすんだ!!!
「~~~っ!!!」
「あ、ほらラズ扉閉まるよ?いいの?」
言葉にならない全力の抗議をかますが、それもクオーツの言葉ではっとし、慌てて取り繕うと、馬車の扉が閉まる最後の最後クオーツの陰から顔を出し閉まりゆく隙間からラルド様を見納めた。
ぱたんと扉が閉まり、しばらくすると馬の鳴き声と共に前の方から少しずつ動き出す軍行。そして、この馬車もがたんっとひと揺れしたのをきっかけにゆっくりと進み始めた。
この時はまだ、泊まりでの遠出とラルド様という普段あまりない組み合わせにただわくわくウキウキしていた。この旅の真の目的を知るまでは。
一泊二日の遠征のはじまりはじまり。
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