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一泊二日の遠征(2)
馬車の中はすこぶる快適で―――暇だった。
「……僕も馬移動がいい」
「ラズの体力じゃすぐ疲れちゃうよ?」
「そんなことわかってらぁぁ」
クオーツと馬車での二人きりに早々に飽き、んんぅーと伸びをしながら窓の外を眺めてもラルド様のお姿は目視できないほど遠くにあった。
代わりに馬車のすぐ横をトールが操縦する馬に二人乗りで移動するマリンと目が合いフリフリ~と手を振ればすぐさまにっと笑うマリンが振り返してくれた。
「トールもマリンも疲れないのかなぁ…」
「あの二人は鍛えられてるから問題ないよ」
「ふ~ん…顔はそっくりなのに全然性格違うよね、トールが笑うとこ見た事ない。てかあまり僕と喋ってくれない」
「……私も怒られてばかりだな」
「う~わ、トールに迷惑かけるの辞めろよな~」
普段のマリンへのあれやこれやを棚に上げ言う僕に対し、持ち込んだ資料を眺めていたクオーツはクスッと笑うと資料を傍らに置き、突然ぽんぽんと自分の膝を叩く。
……なんだ、その合図。
「そんなに暇なら、馬は無理でも私の膝の上で騎乗位―――」
「殴るぞ」
「うそうそ。おいで、寝てていいよ」
「……男の膝枕ほど寝心地悪いもんは無いんだからな」
「ふふ、試してみて」
どうせ暇だし…尻も疲れてきたとこだし…と自分に言い訳をするようにブツブツ呟きながらのそのそクオーツに近寄ると一気にゴロンっと横になる。
足を伸ばしても余裕のソファは馬車がそれだけ大きいということ。決して僕が小さいとかそういうことじゃない。
具合のいいとこを見つけるためしばらくゴソゴソしてやっと見つけたフィット位置にむふんっと満足すると、不意にふわっと漂う番のフェロモンがさらに満足度を底上げする。
「満足ですか?」
「苦しゅうない」
「ふふ、ゆっくりお休み。休憩地点に着いたら起こしてあげる」
落ち着く番のフェロモンと、頭を撫でる優しい手つきによってすぐさまとろんと落ちはじめる瞼は、クオーツの言葉にギリ「ん…」と生返事を返せたかどうか……あっという間に夢の世界へ旅立っていた。
次に目覚めたのは休憩時間を知らせる優しい報せ――とは全く違う、けたたましい馬のいななきだった。
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