【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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一泊二日の遠征(3)


 
 
 外から聞こえる激しいやり取りに尋常ではない何かが繰り広げられているのだと寝起きながらすぐに察知し素早く身を起こす。
 耳をすばせば遠くで金属同士がぶつかる音も聞こえてきた。
 
 
「な!?なに!?襲撃!?」
「落ち着いて、まだ状況がわからない。一旦報告を待つ。大丈夫、ラズは絶対に守るから」
 
 
 焦る僕を落ち着かせるため、ぎゅっと抱き込むクオーツに大人しくされるがまま目の前のシャツを握りしめると馬車の小窓からトールとマリンが顔を出した。
 
 
「クオーツ様、現在賊の襲撃を受けております。もう間もなく鎮圧完了しますのでそのままお待ちください」
「わかった」
「ト、トール、マリンも大丈夫!?怪我しないで…っ」
「俺たちは大丈夫ですよ~、ラズ様はしっかりクオーツ様の傍で隠れて目瞑ってて」
 
 
 ぱちんっとウインクを飛ばしてくるマリンの片手には細身のスラッとした剣が握られ、トールの手にも同じものが握られている。
 すっかり平和ボケした僕にとっての非日常が馬車をへだてたすぐそこで起きている事実に震えが止まらなかった。
 
 
「ラズ、大丈夫。キミが大好きなラルドはこの国イチの騎士だよ。そんな男が率いた隊だ。安心して待っていよう」
「う……ほんと…?ラルド様も、トールもマリンも、騎士団のみんなも、大丈夫……?」
「大丈夫大丈夫、なんなら私だってそこそこの腕前の持ち主さ」
「……それは信用ならん」
「残念、今回はその腕前を披露する機会はなさそうだ」
「え?」
「終わったみたいだよ」
 
 
 そう言うクオーツの言葉と共に、固く閉ざされていた出入口の扉が外からゆっくりと開いていく。
 そして現れたラルド様は何事も無かったかのように息ひとつ切らすことなくそこに立っていた。
 
 
「お騒がせしました、陛下。賊の鎮圧完了しました。お怪我は御座いませんか」
「ん、ご苦労。こちらは無事だよラズも―――」
「ラルド様、血」
「え、」
 
 
 突然のことに全員反応が遅れたのか簡単にクオーツの腕からするっと抜け出すと、伸ばした手の先がラルド様の頬に付着した赤い血痕に到達する――直前で、虚をつかれた表情をしていたラルド様がはっと一歩後ろに身を引いたのと、僕自身クオーツに抱き寄せられる形で、触れることなく終わった。
 
 
「……っ」
「お気遣いありがとうございます、ラズ様の手が汚れますので」
「ぁ、……はい」
「ラルド、傷の手当をしてきなさい。他にも負傷したものがいないか確認してから整い次第、問題ないものだけで先に進むように。状況把握のため私も行こう」
「はっ」
「マリン、ラズの傍に」
「は~い」
「ラズ、ちょっと行ってくるからマリンと待ってて」
「……ん」
 
 
 一礼し踵を返し隊に戻っていくラルド様とそれに続くクオーツ。そんな二人と入れ替わるようにしてマリンが馬車へ乗り込み僕の隣へ腰掛けると甲斐甲斐しく様子を伺ってくる。
 
 
「ラズ様大丈夫?突然びっくりしたね」
「うぅ~マリンんん…」
「うんうん、こわかったよねぇ~よしよし」
「ラルド様に拒否られたぁ…」
「えぇ…そっちぃ?」
 
 
 はぁ、とため息を吐くマリンの肩にえぇんと泣き付きながら、あと少し届かなかった指先をじっと見つめた。
 
 
 
 
 
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