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一泊二日の遠征(6)
「陛下、ラズ様。今夜お休みいただくテントはこちらです」
一際大きい真ん中のテント前で待機していたトールとマリンに促されるままその中を覗けば、そこにはテントの中とは思えないちゃんとした部屋が存在していた。
簡易的ではあるが余裕で大人数人が眠ることが出来るサイズの大きなベッドと服をかけるクローゼット、全身を確認できる姿見など。一晩休むには十分の空間だった。
「うわぁうわぁっどこにこんなの積んでたの!?すごい!」
「国王陛下専用の野営セットですよ~前々から準備はしてたんですけど中々使う機会がなく、今回やっと日の目を見ました」
新品ぴかぴかですよ~とマリンが言う通り、どこもかしこも綺麗なテントを外からも内からもまじまじと観察しながらそっと中へ踏み入れる。四人でぞろぞろ入っても余裕の空間。天井までの高さも広く、全く圧迫感を感じなかった。
外套を脱ぎトールに渡すためクオーツの腕が離れるやいなや抑えきれなかったウズウズが解放され、一目散にベッドにばふんっと飛び込んでみた。
絶賛わかりやすくはしゃいでいます。
「ひゃあ~ベッド広い~ちゃんとふわふわ!」
「ラズ様~お洋服シワになるから脱いで~」
苦笑しながらベッドに近付いてくるマリンに、へいへい~と身体を起こし羽織っていた外套を手渡す。
そこでふと一度断られたお誘いを再度してみることにした。
「やっぱりさこのベッドならマリンも余裕で一緒に寝れるよ、どう?」
「だから絶対無理ですって俺を殺したいんすか」
やけにクオーツの方を気にしながらコソコソ早口で捲し立てるマリンの勢いに、お、おぅ…と圧倒されていると突然サッと伸びる手が身体を後ろに引っ張り、気付けばぼふんっとベッドに沈み込んでいた。
ぱちぱちと見上げた視界にうつるテントの天井――の中に紛れるクオーツの顔。笑っているのに目が笑っていない。
「……何すんだよ突然」
「わかってるとは思うけど、私と二人で寝るんだよ」
「えー…」
「ふふ、不服そうな顔もかわいいね」
ちゅっ、とあまりにも自然な流れで口付けを落とされ目を白黒させながら言葉にならない叫びを上げている間にそそくさとテント外へ出ていくトールとマリンの姿を視界に捕える。
「ちょっ、二人ともどこ行く気」
「こら、よそ見しないで。私だけを見て」
「いやいやっ、なにおっぱじめようとしてんだよ!外に沢山人が―――」
「関係ないよ。彼らは仕事に集中しているのだから」
「いや無――っんぅ」
必死な抵抗もむなしく、両頬を固定され逃げることも出来ず塞がれた唇を更にくちゅっとこじ開けられると巧みな技で入り込んでくる舌の動きがクオーツの本気のそれで、悔しきかな簡単に体に力が入らなくなってしまう。
「っん、ふ…」
外にはたくさんの人達が今も尚働いていて、声だっていくら我慢しようとしたって当然漏れ聞こえてしまうに決まってる。
こんな空間で絶対ダメなのに……
警鐘を鳴らす頭とは裏腹に腹の奥底がじわじわと疼きはじめる本能を隠すことが出来なかった―――。
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