【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

文字の大きさ
34 / 141

一泊二日の遠征(10)


 
「……お風呂は嬉しいけど、これは聞いてない」
「ラズ、早くおいで冷めちゃうよ」
 
 
 用意されていたお風呂はこれまたどこから持ってきたのかと疑問に思う、大人二人が肩を並べて入れるくらいのサイズの釜にもくもくと湯気をあげるお湯が張られとても気持ちよさそうではある。
 だが、問題なのは月明かりが照らす森の木々を使って張られた目隠し用途の白い幕。お風呂を囲うように四方をその幕で覆われた空間の外を見張りする騎士団員四人のうちの一人―――
 
 なぜ騎士団長自ら風呂の見張りをする!?
 
 
「絶対この役目はラルド様じゃない!」
「みんな忙しいんだよ。ほら早く服をお脱ぎ」
「お前と風呂に入るところを推しに聞かれるなんてイヤじゃぁぁぁっ」
「大丈夫、聞いてないし見てないよ。そうだなラルド」
「はい、聞こえません」
「絶対聞こえてるやつ――あっ、ばか、脱がせんなっ触んなっ」
「ほらバンザーイ」
 
 
 問答無用で服を全て剥ぎ取られあっという間に素っ裸にされてしまった。
 うぅ…と打ちひしがれている横で自分も素早く脱いでいくクオーツは惜しげも無くその裸体を晒し、それはもう綺麗に割れた腹筋がキラキラと眩しかった。

 さっき同じだけ食べていたはずなのに…なぜぽっこりお腹なのは自分だけなのか……
 
 
「くっそ…!」
「?どうしたの、私の裸体などもう見慣れてるでしょ。ほら行くよ?」
「ぬぁっ!?見慣れてるとか言うな!って、引っ張るな!自分で歩くーー!」
 
 
 にこにこ鬱陶しいクオーツに手を引かれ、湯気を立てるお湯にちゃぽんと足を突っ込んだ。



 
 
「……ふぁー…お風呂最高」
「お気に召したならよかった。少しでも疲れを癒してもらいたいからね」
 
 
 散々文句は言ったものの、そこまで広いとは言えない風呂釜の中、結局クオーツに後ろから抱かれ密着して入る形で落ち着いてしまっていた。
 絶対に変な事すんなよ、と言い聞かせているのは決してフリではない。
 
 
「別にこれを用意してくれたのは団員さん達で、お前はなんもしてないだろ」
「ふふ、そうだね。じゃあ私はラズの疲れが取れるようマッサージをしようかな」
「はぁ!?結構です。いりません。触らないでください」
 
 
 変な動きをされる前に先手必勝、ガシッと両手を掴み、クオーツの動きを制する。
 これで変な事はできまい。
 ふふんっと得意げに後ろのクオーツににやっと笑みを送れば、ふ、と意味ありげな笑みを返され、なんだよ…と身構えていると不意にお湯の中、クオーツの太ももを跨ぐようにして身体の位置をズラされる。
 
 
「っ!?ぁ、」
 
 
 そんなわずか一つの動きが下半身の中心から後ろの穴までまとめてぐちゅっと刺激するのには十分だった。
 
 
「そうか、ラズは手ではなくこちらの方がいいんだね、ごめんね気が利かなくて」
「はっ!?待っ、そんな事誰も言ってな――っんぅ」
「しー、聞こえてしまうよ?いいの?」
 
 
 いつの間にか自由になっていたクオーツの手が僕の口を塞ぎ、指で指す方向につられて視線を向け、はっと気づく。一枚の幕をへだてた向こう、月明かりでシルエットが透けるその後ろ姿。
 ラルド様や他の団員さん達がすぐそこにいることを。
 
 
「―――っ!」
「ね?」

 
 ニコッと場違いな笑みを向けてくるクオーツの悔しい程に整った顔が心底憎たらしかった。
 



感想 43

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」