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推しの休日ウォッチング作戦(1)
「ラズ様~何処ですか~ホント勘弁してくださいよぉ~俺が殺されてもいいんですか~ラズ様ぁ~っ」
どこを見回しても青々と生い茂る緑と、色とりどりの花が咲きほこる王室お抱え庭師自慢の庭園。
そこに、僕を探し回る世話係――マリンのよろよろな声がもう長いこと響き渡っていた。
「ラズ様ぁ~」
疲れが伺える声を聞いても、心を鬼にして身を潜め続ける。
ごめん、マリン……お前の犠牲は忘れない!
僕にはやらねばならない事があるんだ。
反対方向を探しに行くマリンの様子を伺いつつ、隠れていた場所からジリジリと移動する。
王妃、ただいま絶賛逃走中―――!
◆◇◆◇◆
遡ること数刻前。
数日前に言い渡された外出禁止は無事解除され、公務に向かったクオーツを見送るやいなや、早速いつものようにラルド様見守りスペースで炎天下の中ニマニマと訓練ウォッチングに精を出していると、開始して間もなく早々にやって来たクオーツに部屋へと連れ戻されてしまった。
水も持たずあんな所に長時間いたら倒れるでしょ、とかなんとか言ってくる小言をはいはいと右から左に聞き流す。
……まぁ、確かに今日は一段と暑かった。
ムスッと不貞腐れる僕にひとつため息を落とすと、甘いものを与えておけば大人しくなるとでも思ったのかマリンに用意するよう命じ、急き立てるトールに連行されるように早足で公務へと戻って行く。
どうやら忙しいらしい。
いってらっせ~と閉まる扉を見送るとシーンと室内は静まり返る。
大抵の流れであれば、一度連れ戻されるとその日は渋々大人しく過ごしていたためクオーツも油断したのだろう。
マリンも席を外したこの瞬間、僕は部屋に完全に一人だった。
「……ふっふっふ」
いざゆかんっラルド様の半休ウォッチング!
さっき訓練を覗いていた時に騎士たちの会話が漏れ聞こえてきたところによると、ラルド様は本日午後からお休みらしい。
いつも忙しいラルド様にはゆっくり休んでいただきたいが、ぜひともそんなお姿も拝見させていただきたい…!どう休みを過ごされるかもバッチリ情報キャッチ済みだった。
これはもう、今日やるしか無かった。
まず手始めに常にそばに居るマリンを撒くことから、と思っていたが丁度席を外してくれてラッキー。仲間にひきいれてもよかったが、やはり推し活は誰にも邪魔されず一人ニヤニヤと楽しみたいもの。マリンには申し訳ないが犠牲になってもらうことにした。
さすがに正面から出ていく命知らずでは無いため、残された逃走経路はただ一つ。
外へ続くバルコニー。
しかしここは三階。残念ながら、ぴょんっ着地!ができる身体能力は持ち合わせていない。そこで登場するのがもしもの時のために隠しておいた頑丈なロープの出番だった。
鼻歌混じりにバルコニーへ出ると、拙い手付きで手摺に括り付けてみる。
「……まぁ、こんなもんか。もしもの時は……下の植垣を信じよう」
ぐっぐっと引っ張って強度を確かめる。着地したあとすぐに走り出すため自分にロープは括り付けず手に持つのみ。
練習などしたことない一発本番。
頭の中でのシュミレーションは何度もしてきた。
変なところで命知らずだなぁ、ともしここにマリンがいたら間違いなくツッコミが飛んできそうである。
バルコニーの手摺りを乗り越え、よし、行くぞっと飛び降りようとした、その瞬間―――
部屋に戻ってきたマリンとバッチリ目が合った。
やべ……
「あ……」
「ラ、ラズ様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
思っていた降り方とは違う感じで身体が下に降りていく。正確に言えば―――落ちた。
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