【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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後日談(2)sideラルド

 
 
「びっくりしたぁ…こんにちはラルド様、こんな所でどうしたんですか?」
「ラズ様こそ…そんなに走ってお身体は無事なのですか?」
「全然大丈夫です!ピンピンしてますよ~」
 
 
 ほら、とぴょんぴょん飛び跳ねて見せてくださるお姿が可愛らしい。
 
 心配していたよりも元気そうなご様子に密かにホッとしたのもつかの間、何かが響いたのか突然ピキっと固まる身体に咄嗟に手を伸ばす。
 相当痛みを感じたのか、ぐぬぬと悶絶する表情で私の手を取りよろよろ掴まるラズ様を「ご無理はなさらず」と苦笑しながら支えていると、不意に上から見えてしまった―――首筋の痕跡。
 よくよく観察すれば、痛みを訴えているのも腰付近の下半身だと推定できた。
 
 
「っ」
 
 
 瞬間、頭をよぎるのは遠征訓練でのあの一夜。
 私の腕の中でクオーツ様と交わりながら果てたあのラズ様の妖艶なお姿。
 
 
 ―――ひゅっ、と乱れかける呼吸を必死に押し殺す。
 
 あの日、クオーツ様から下がっていいとの許しが出るやいなや、声をかけてくる部下を振り切り一人野営地から離れた森の奥深くまで駆け、隠れるように息を潜めて行った行為。
 脳裏に焼き付いて離れないラズ様のお姿とほのかに残るリアルな体温。その二つで、存在を主張する張り詰めた己の性を処理したあの時間は、後に残った強い罪悪感と共に墓場まで持っていくのだと心に秘めた。
 
 誓って、ラズ様で致したのはあの一度きり。
 それ以来、忘れようと記憶の奥底に追いやったあのお姿がいま突如、フラッシュバックした。
 
 
 ラズ様には悟られないよう、慎重に深呼吸を繰り返し気を落ち着かせる。
 そんな黙りこくる私に「ラルド様?」と無邪気に見上げてくるその上目遣いが今はただただ目に毒だった。
 
 
 無理やり咳払いで誤魔化す。
 
 
「……どちらへ向かう予定ですか?このままお連れ致します」
「いやいや大丈夫ですよ!お忙しいラルド様を引き止めるわけにはいきません!今は貴重な休憩時間のはずなのにこんな所にいるってことは何かご用事ですよね!すみません長々と」


 何故スケジュールを把握しているのか、という疑問はさておき、頑なに大丈夫だというラズ様のお言葉を尊重する。


「……わかりました。ですが、決してご無理なさらないでくださいね何かあればすぐ近くの者に声をかけてください」
「はい、わかってます」
 
 
 騎士の真似か、ビシッと敬礼をしてみせる姿もいちいち可愛らしいと思ってしまう。
 にししっと笑うその小さな頭を撫でる権利は私には無い。伸ばしそうになった手をギリっと強く握りしめた。
 
 
「あ、それとラルド様、昨日は本当にお騒がせしました。もう少し自分の立場と陛下のお気持ちを考えて行動するようにします」
「……ご立派です、ラズ様」
「へへ、褒められた」
 
 
 ……本当に、ご立派になられた。
 
 近くで見てきた生後10数年のラズ様と、前世の己が死ぬ間際までそばで仕えた翡翠様。そのどちらとも違う洗礼されたお顔付きは一国の王妃として今後より一層輝くことだろう。
 そんな尊いお姿を陰ながら見守り、時に身を呈してお守りする為、いまの騎士団長という立場まで登りつめた。
 
 
「あ、でもでもラルド様の邪魔にならないよう陰ながらお姿を追いかけるのは変わらずなので、そこだけはお許しください!推し活は辞めません!息を潜めて眺めてます!」


 無邪気な笑顔を惜しみなく向けてくださる。
 太陽みたいなお人。


「どこにいても、私はあなたを見守っています」
「ひゃぁ~っこれぞまさに公式認知~!超絶特大ファンサもらっちゃったぁ~」
 
 
 ぐふふっと笑いながらそれでは、と去っていくラズ様に、前を見て、という声は届いただろうか。
 角を曲がりその姿が見えなくなってもなお、しばらくその場に留まり、かの人の痕跡を名残惜しく見届けた。

 
 
「ラルド様、クオーツ様がお待ちです」
「――承知した」
 
 
 そんな時間は、痺れを切らしたトール殿が呼びに来るまで続いた。
 
 
 
 
 
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