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空席の護衛騎士(4)
「クオー…んぅっふ、ぁ…っ」
「……」
執拗なキスの合間に潜り混んできた手にビクッと震える。ラルド様の温かい手と打って変わって驚く程冷たい手。それがらしくもなく、服の下で余裕なさそうにまさぐってくる。
なに、なんなの、なんか言えよバカクオーツ――
あっという間に服は乱され、息も絶え絶えな状態でクオーツを見上げれば、その表情は―――
「っ、」
しかもなんだよ、その顔……
「クオーツ…お前マジでどうし――」
なんか変だよ、そう言いたかった僕の言葉は、ガタッと聞こえた奥の部屋からのわずかな音で掻き消えたと同時にクオーツの動きもピタッと止まる。
「わっ、ラルド様?突然止まって何――わぶっ」
「失礼いたしました、我々は外で控えております」
問答無用でマリンを連れ出すラルド様の気配がパタンと扉の向こうに消えてもなお、クオーツの硬直状態は続いた。僕も僕でいつもなら、こんな不埒な格好をラルド様に見られたっ、と取り乱すところだが、今はそれどころじゃなかった。
今日一日変だ変だ、と思ってはいたが、番の様子がとうとう本格的におかしい。
僕を映す瞳は僕を見ているようで見ていない。
「~~っクオーツ、クオーツッ!」
「っ、」
なんの予告もなしに、クオーツの国宝級の綺麗な顔をべちんっと豪快な音を立て思いっきり挟む。もしこの場にマリンが居たら、ひぃぃっと叫び声を上げていたかもしれない。
それくらい容赦なく叩いてやった。
「……痛い」
「わざと痛くしたんだバカクオーツ!なんなのっなんなのお前っマジ怖いんだけど!!」
「ごめ……」
「なんか思ってることあんなら言葉で言って!わかんないから!一人で抱えて暴走すな!」
ぐわぁぁっと言いたい事をぶつけながら中腰だったクオーツの腕を引っ張り、場所を入れ替わるように無理やりソファに座らせると、自分はその膝の上に跨り向かい合う。
今度はクオーツを僕とソファの間の板挟みにしてやると、ちょうど同じ目線でふんっとふんぞり返り「さぁ、言え」と白状させる。
「……別に、何もないよ」
「何も無いわけない。こちとら何年お前に振り回されてると思ってんだ?様子がおかしいことくらいわかるわい!」
番契約を結ぶずっと前、早々に王城に囲われた僕の人生は、とっくに産みの両親より長くクオーツと一緒に居る。
それだけ長い時間、この一癖も二癖もある番と一緒に過ごしてこれた。そして、これからもどちらかの命が終わるまでそれは続く。
なんか言えよ、と俯く顔を覗き込めば、そこにはいまだかつて見た事ない表情を浮かべるクオーツがいた。
「……そう、私はラズを振り回して、閉じ込めて、最終的には自分だけのモノにするためならキミを壊しかねない。そんな自分が怖い」
見ないでと言わんばかりに両手で顔を覆い更に俯いてしまう。その拍子にクオーツの後ろ髪がサラリと落ち、普段髪に隠れた項が顕になっている。
オメガと違って何も痕がない綺麗な項。
「……」
そこをじーっと眺めるうちに、気付けば身体が勝手に動いていた。
「っ!?」
ガバッと顔を上げたクオーツの笑えるくらい間抜けな驚いた表情。それを見れた事に心底満足気に笑いながら口についた血を拳で拭き取る。
クオーツの項に思いっきり噛み付いてやった。
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