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最優先事項(1)sideクオーツ
しおりを挟む「クオーツ様、ラズ様が───」
王城の広間で玉座の上から臣下の報告を順に聞いている最中のこと。
珍しく焦った表情のトールが話を遮り報告しに来た緊急事態に、瞬時に嫌な予感がよぎった。
◆◇◆◇◆
ラズに関することであればどんな些細なことでも最優先事項、その事をよく理解している側近トールはいままでも重鎮が集う会議中や遠征中、如何なる状況でも割って入ってきては直接報告をしにやって来た。
重鎮からの苦言以上に報告をしなかった時の方が幾分も恐ろしいという事を身をもって知っているからだ。
しかし今回の様子はいままでの比では無い。
一言の断りもなしに本題を告げてくるのはよっぽどの事。
この嫌な胸騒ぎが杞憂であって欲しい、そう願いながらトールに話の続きを促した。
「ラズ様が、お茶会の最中、突如口を押え吐き気をもよおされました。毒の可能性は…まだ否定できません…」
「!?」
考え得る予想の遥か上を行く事態に目を見開き、脳が完全に理解するより先に口と体が動き出していた。
「早急に主治医を向かわせろ、私は先に行く」
「クオーツ様!」
簡単に指示を出すだけだすと、臣下たちのざわめきを背にお茶会が開かれる庭園へ足早に向かった。
普通に行けば十分近くかかる庭園への道のりも、ものの数分で辿り着くと、ある場所を囲うようにして、わっと人垣ができているのを発見した。
衛兵は何をしている、と出かけた舌打ちを噛み殺し、構わずその中へ突き進めば、一人がこちらに気が付くと途端自然と道が開けていく。
やがて見えてきた騒ぎの中心。
初めは地面に座り込むマリンの後ろ姿と、傍らに立つラルドの姿しか確認できなかった。しかし、少し角度を変えればすぐにマリンの腕の中で気を失うラズが目に入った。
「ラズ!」
「クオーツ様───」
「まぁっクオーツ様よ!」
「なんてこと、お召し物が!」
マリンの声をかき消すくらいの周りの声。それらは今この瞬間心底どうでもいい、私の服に地面の砂が付く事を気にする無数の野次馬たち。
「静まれ」
呆れてため息も出ない雑音を一声で黙らせると、片膝をついてラズに手を伸ばす。
「……状況は」
「ラズ様のご様子と一通りの飲食物を調べたところ、毒の可能性は極めて低いと思われます。原因は不明ですが突如気持ち悪いと仰り、ほんの数分前に気を失われました」
マリンの腕の中からラズを引き受け、ラルドの報告を聞く。
簡単に腕の中に収まってしまうほど小柄なラズを用心深くじっと見つめ観察すると、確かに顔色はどこか青ざめているように見えた。
「……毒では無いんだな」
「はい、毒ではありません」
それを聞き一旦のところホッと胸を撫で下ろす。
詳しい原因が分からない今、依然として油断ならない状況には変わらないが、トールから一報を受けたあの瞬間、脳裏に過ぎり今も尚思考をちらつく忌々しい幻覚───血を流し倒れるラズの姿を頭の中からかき消した。
「ラズ…」
固く瞳を閉じ、か細い呼吸を繰り返すラズを胸に抱き、主治医の到着を待った───
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