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報告(4)
父様や兄様たちの熱烈大号泣ハグ会に巻き込まれている傍ら、いつの間にか一人上手く抜け出していた母様が一歩離れて僕たち家族を見守っていたクオーツに話かけに行く光景を視界の端に捕え、耳をダンボにして二人の会話に聞き耳を立てる。
「陛下、先に挨拶も無しに申し訳ありません、お騒がせしております」
「いえ相変わらず仲のいい家庭で見ていて心が温まります、ラズのあの明るさは御家族のおかげですね」
「ふふ、そう言っていただけますと嬉しいです。ですが、そろそろいい加減にさせないとですね…。
あなた、ソーダにアズも、いつまでもラズにかまけていないで陛下にご挨拶なさいな」
母様の声掛けにピクっと反応する男三人衆。
その表情にはわかりやすいくらい堂々と嫌だと書かれていた。
実を言うと、この国と王族に忠誠を誓う公爵家である臣下の立場とは裏腹に、僕の嫁入り大反対勢の三人は個人的にクオーツともうかれこれ十数年間、微妙な関係性だった。
母様いわく、目に入れても痛くない可愛い息子(あるいは弟)をある日突然問答無用で奪っていったクオーツは悪魔だ、と日々恨み言のように嘆いているらしい。
僕も昔はクオーツの事を推しから引き裂く悪魔だと非難していたけれど……父様達には悪いが、表現の仕方がさすが血筋、と思われたくないなと思ってしまった。
そんな事を考えている合間にも、渋々動き出す父様達の無理やり笑みを貼り付け歩み寄る姿が不気味すぎる。
「……陛下、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません、この度は我が息子の目出度い報告を頂きまして心より…うっ、心より…はぁ…祝福申し上げます」
「こちらこそ、ご多忙の中足をお運び頂き感謝いたします。久々の家族水入らずですから、私の事はお気になさらず。ソーダ殿もアズ殿も、存分にラズとお話ください」
「ふん、お前に言われなくとも」
「相変わらずラズは自分のモノ的な余裕がムカつくわぁ~」
後半怪しい所はあったがまだ大人の対応を見せる父様はまだしも、兄様たち…完全にやってる……。
うわぁ…と思いながらチラッと見た母様の表情は案の定、お怒りです。
「ソーダ、アズ……あなた達、陛下に向かってなんですか、その態度は。わたくし一人で訪問する予定をどうしてもと言うから同行を許可したというのに、そんな情けない姿を晒すために連れてきたわけではありませんよ」
「「……すみません母様」」
いくつになっても母様に怒られる兄様たち、ダサすぎる。
うわぁ…と呆れた表情でその光景を眺めながらすすすっとクオーツの隣まで歩み寄る。すぐに僕に気が付くと「座る?」と空いているソファへ促され、素直に腰掛けるとそのままクオーツの腕も引っ張り隣に座らせる。
ピッタリ並んで座る僕たちを、クオーツも含め僕以外の全員がきょとん、と見つめてくる。
集まる視線に僕までもきょとん、としてしまった。
「あらまぁ…ふふ、そうね、番との接触やフェロモンが一番落ち着くわよね。陛下、妊娠中は大変不安定です。なるべくラズのそばにいてあげてください」
「……はい、そう致します」
くすくす笑う母様と微笑みながら頷くクオーツに、やっと状況を理解した。
隣に座るだけでなく、自らがっしりクオーツの腕に絡めて離さない僕の行動に。
「え───あっ、あっ、無意識、うわっみんなの前で恥ずかしっ」
「ラズ、安心して。ずっとそばにいるよ」
「いらん!!」
アハハと笑うクオーツと母様、わなわなと震える父様や兄様たち、久々に自分の家族と触れ合い報告する事も出来ていい一日を過ごせた。
しかし、そんな穏やかな日々も長くは続かない。
妊娠初期の症状は人によって内容も重軽度も全く異なり個人差が激しいものだと老先生に言われ覚悟はしていた。
軽いといいな、と願った思いも虚しく───人より特段重いつわりの日々が始まった。
報告 -END-
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