【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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忘れ去られた薔薇(2)


 
 カツン、カツン、とヒールを響かせ近付いてくるローズ様から距離を取るため必死に立ち上がろうとするも、ガクガク震える足は全く使い物にならず、ならばと無我夢中で後ろに後ずさる。
 新調したばかりの式典服は水に濡れ地面を引き摺り、既にドロドロのボロボロだった。
 しかし、そんな事を気に止める余裕もないくらい目の前のローズ様の狂気に満ちた目に怯え、こちらが後ろに下がればゆらりと詰めてくる距離は一向に開きも縮まりもしない。

 
 そんな焦る攻防戦の終焉は唐突にやってきた。
 

 とんっ、と何かに背中がぶつかる感触。
 ハッと背後に視線をやればとうとう壁際まで追い詰められ、これ以上後ろへは下がれなかった。
 
 
「───っ」
 
 
 恐る恐るローズ様へ視線を戻せば、変わらずにまぁと不気味な笑みを浮かべ、僕の醜態を心底楽しんでいるように見える。
 
 
「ふふ、お久しぶりの再会ですよ?そんなに怖がらないでくださいな?」
「……」
 
 
 いつ襲いかかられるかわからない。無意識にお腹を庇いながら、ローズ様から目を離せないでいると、大きく膨らんだ腹の存在に今気付いたかのように視線がそこを凝視する。
 
 途端、恐怖がゾワッと倍増した。
 
 
「はぁ…ラズ様、わたくしね…クオーツ様はいつか目を覚ましてわたくしの元へ戻ってきてくださると信じていましたの」


 ひとり話し始めるローズ様の話は恐怖で全く頭に入ってこない。しかしそんな僕の様子などお構い無しに一人語りは続いた。


「運命の番だなんてまやかしに唆されて淫乱なオメガに熱を上げているのも今だけだと───」
「っひ……」
「可哀想なクオーツ様……こんなオメガに子まで勝手に作られて……今頃お困りに違いないわ」
「なに……何を言って……」
「わたくしが救って差し上げないと」
「ローズ様っ!?!?」
 

 どこから取り出したのか、いつの間にかだらんと下がる手に握られた鋭利な刃物にゾッと青ざめ、悲鳴に近い声で叫ぶが彼女には何も届かない。

 
 狂ってる───
 
 ガクガク震えながら、それが腹に突き立てられる最悪の想像をしてしまった───
 
 
「クオーツ様今お助け致します」
「や、やめ……来ないで…来ないでっ!!!」
「死ねっ!!!!」
「っ」
 

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