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巡り巡る
意識が戻ったばかりの数日間はすぐに体力も回復せず、老先生の経過観察を受けながらしばらくベッドの上で過ごす日々。
しかしそれも時間経過と共に驚きの速度で回復し、脇腹と出産の傷跡が少し痛みを訴えるだけで、その他食欲もしっかり有るという案外元気な僕に周りは安堵の表情を見せた。
それでもベッドから出て動き回る許可はなかなか下りない。
不貞腐れる僕の唯一の楽しみは、産まれたばかりのこの子、ジェイドと共に過ごす幸せな時間だった。
◆◇◆◇◆
「ジェイド~こっち向いて~」
「んぅ?」
小さな赤子にはとんでもなく広い僕とクオーツが使うベッドの上に横たわらせ、名を呼べば、すぐさま反応を示してくれるきゅるきゅるのおめめと目が合う。
それだけで心臓を鷲掴みにされたような衝撃が周りの大人たちに広がっていく。
「ひぇぇっかわいっ」
「我が子ながら本当に可愛いねこの子。天使が天使を産むとこうなるのか……誘拐されないか心配だな」
「……なんか、クオーツってやばい親バカになりそう。マリンもそう思わない?」
「マジで思います……」
しみじみと頷き合う僕たちに一歩後ろから見守っていたラルドのクスッと笑う声が聞こえ、つられて振り返りにっと笑みを送る。
すかさずこっち来てと手招きすれば素直に近付いてきてくれた。
「ラルドも見て、ジェイドかわいいから」
「いいお名前ですね、ジェイド……翡翠という意味ですか」
「うん、クオーツが文献から見付けてきてくれた。へへ、おそろい」
巡り巡って再び前世の名前が形を変え、こうして我が子に戻ってきた喜びに、呼ぶ度に何度も幸せな気持ちになれる。
「───ラズ様」
「ん?」
不意に呼ばれ顔を上げれば、懐かしい世話係の顔と重なる優しい笑みで僕を見つめるラルドと目が合う。
「こんな私ですが、これからもラズ様のおそばであなたの幸せを見守らせてください」
「~~っ、うん、僕もラルドの幸せを心から願ってる。これからもよろしくね」
「───はい」
前世では果たせなかった翡翠と蒼唯の願いを、ラズとラルドとして今世でやり直す。
そんな機会を与えてくれた神様に感謝しながらラルドと笑いあっていると、突如間に割り込んでくる人影は考えるまでもなく、嫉妬深い僕の番様。
わ、と驚き目を丸くしてクオーツを見上げれば不服そうなその表情に瞬間ふはっと笑ってしまった。
「クオーツ、なにその顔」
「二人して見つめすぎ浮気は禁止だよ」
「浮気て……見つめ合っただけで浮気になるんなら手を繋いだらどうなるんだか」
「その時は相手の手を切り落とす」
「こわっ恐ろしいこと言うなよ……」
「クオーツ様、嫉妬深い男は嫌われますよ」
助け舟を出してくれるラルドにもっと言え、とエールを送っていると、嫌そうに顔を歪めるクオーツの珍しい顔に更に笑いが込み上げる。
「ラルド、お前最近開き直って私に遠慮がなくなっていないか?私の部下だよな?」
「いいえ、私はいついかなるときもラズ様の従者ですそこのところお間違いなきよう」
「ふあぁっラルドかっこいい…」
「ばぶぅぅ」
久しぶりにやって来る推しが尊いムーブにはわわっとテンションが上がる僕と一緒になって反応するジェイドに、おや?と全員の視線が集中する。
きゃっきゃ楽しそうに笑う赤子の視線の先は───
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