【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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SS・IF・パロディー

【SS】知らなくていいこと(1)


 
「じゃあラズ様、ちょっと出てくるので、俺が不在の間ラルド様に迷惑かけないようにいい子にしててくださいね~」
「ねぇ僕をいくつだと思ってる!?そういうのはせめてジェイドに言ってよ…もう…。わかったから、早く行ってらっしゃい」
「はいはぁい、それではラルド様少しの間よろしくお願いします」
「承知した」
 
 
 昼下がり、急な呼び出しで慌ただしく出ていくマリンに手を振り、残されたラルドとすやすや眠るジェイドの三人でのお留守番がはじまった。
 
 
 
 
 
 ◆◇◆◇◆

 
 
「……」
「……」

 
 ぎこちない沈黙が続く空間。
 不思議と気まずいといった感じではないが、会話はほぼ無かった。


「……紅茶のお代わりをいれましょうか」
「あ、じゃあお願いしようかな」
「はい」

 
 綺麗な所作でティーポットから紅茶を注ぐラルドを眺めながらその姿を観察する。
 常日頃、僕のそばには大抵マリンがついているためこうして周りにラルドしかいないというシチュエーション自体、今までほぼ無いに等しかったかもしれない。思い返せばまだジェイドがお腹にいる時、つわりで伏せっていた僕にラルドが手作りの玉子豆腐を作ってくれたあの時が最後だった。
 
 お互い、過去の記憶を共有したあれからはや半年以上が経過する───
 
 
「……ラルド」
「はい」
 
 
 たとえどんな小さな声でも、呼びかければすぐに反応する元付き人、現護衛騎士。
 そういう所は昔と全然変わらないなぁとしみじみしながら嬉しさが込み上げてくる。
 
 名前を呼んだきり、次のアクションを何も寄越さない僕を怪訝そうな目で見てくるラルドにふはっと笑ってしまった。
 
 
「ラズ様?」
「なんでもないよ~」
 
 
 すっかりラルドと呼び捨てにすることにも慣れてきた。
 
 
「なんかあれだね、相変わらず背が高いから急須もティーポットも似合わないね」
「……気恥ずかしいのであまり見ないでください」
「いやぁ~推しの姿はいついかなる時でも目に焼き付けなきゃ」
「だからなんですか、その推しとは」
「んー…推しは推し」
「はぁ…また変な知識を取り入れて……」
 
 
 一度話し始めてしまえば自然と弾む会話。
 
 敬語をやめた僕に調子を取り戻したのか、ラルドもまた昔のように話してくれるおかげで小言が多かった懐かしい付き人の姿がより鮮明にダブる。
 実際のところ記憶を共有してからも、人目があるところでは護衛騎士という立場上あまり馴れ馴れしくすることは出来ないという謎のラルドの信念があったため中々ゆっくり会話する機会がやって来なかった。
 だから久しぶりに味わうこの、うずうずした感覚。
 
 やっぱり、僕にとってラルドはクオーツとはまた違う種類の特別な存在だった。
 
 
「ひとつ、お伺いしてもよろしいですか?」
「うん、なぁに?」
 
 
 なんでも聞いて、と胸を張る次の瞬間、ラルドの問いかけにピシッと動きが止まった。
 
 
翡翠ひすい様は、あの後も幸せに過ごすことはできましたか?婚約者───水晶みずき殿に幸せにしていただけたのでしょうか」
「……」
 
 
 咄嗟に言葉が出てこなかった。
 
 一足先に逝ってしまった蒼唯あおいは翡翠の最期を知らないのだ───。
 
 
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