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SS・IF・パロディー
【SS】国王陛下の溺愛(2)
───と、いうのが一時間程前の出来事。
今はまるで、意中の相手を口説くかのように無駄に整った顔をこれでもかというほどキメ、甘々な声でジェイドに向かってアホな戯言を繰り広げている。
「こいつは何を言っているんだ…?」と、そろそろ呆れはじめた僕は、クオーツを追いかけ共に部屋までやって来ていたトールに、何コレ、と視線を向けた。
「ねぇトール…僕の番はとうとう頭がおかしくなったのかな…?」
「……大変ストレスがお溜りのようです」
「また会議で何か言われてんの?」
「まぁ…そうですね、ですがそろそろ次の予定もございますので───」
「ひぇっ」
すぅ…という一呼吸の後、いい加減仕事に戻れ、と無言の圧力で背中に般若を背負うトールの凄まじい迫力に共に様子を眺めていたマリンと、ひえぇぇ…と身を寄せあい怯えた。
「ク、クオーツさんやぁい……そろそろ仕事戻った方が良さそうだぞー……」
「ん?なぁに、ラズ」
静かに怒るトールの気配に全く気付いていないのか、あえて無視を決め込んでいるのか、どちらかわからないクオーツ。外野のこちらがその雰囲気に耐えかねそっと背中に声をかければ、ジェイドへ向けていた爽やか笑顔をそのまま携え振り返ってきた。
「うっ…眩しっ」
「目がぁぁっ」
「……二人とも楽しそうだね?」
くそっ、キョトンってされた。
何をしているんだい?とでも言いたそうな顔で見てくるクオーツにそれはこっちのセリフだと言ってやりたいのをぐっと堪え、トールの方へ意識が向くよう言葉を続ける。
「はぁ…クオーツ、何があったか知らないけどジェイドに構うのもそれくらいにして仕事戻りなよ。トールが待ちくたびれてるよ」
「トールが?」
そう言う僕の言葉で初めてトールの方へチラッと視線をやるクオーツ。
ふーん、といった表情が嫌な予感しかしない。
「トール」
「はい」
「午後の予定は全てキャンセルにしておいて」
「お前は馬鹿かーーー!」
「あなたは馬鹿ですか」
僕の発狂とトールの冷静なツッコミがユニゾンのようにピッタリ重なる。
トールがはっきり物言う側近でよかった。
こんな上司に振り回されるトールマジ可哀想…と心から同情しつつ、止まぬため息を零しながらクオーツの元まで近寄ると静かに振り上げた手で問答無用で頭をベシッと叩いた。
これまた周りからは息を呑む気配が感じ取れたが気にしない。
目の前の人物が例え国王陛下だろうと誰かが注意しないとダメだろ。
「……痛いよラズ」
「痛くしたんだ馬鹿クオーツ」
さすがに赤子の力とは別物。痛っとリアクションするクオーツをチラッと視界に入れたきりそのままジェイドを抱き上げる。
あー…と名残惜しそうに追いかけてくる鬱陶しい視線を完全に無視すると、きゃっきゃ笑うジェイドににぃっと笑みを送りながら「そろそろお昼寝しような~」と宥めながらマリンに引渡し、すぐそこのジェイドのベッドへ連れていってもらった。
「はい、ジェイドタイム終了!ほら、トールも待ってるよ、さっさと行け。我が子を可愛がるのもいいけど色々疎かにするのはダメ親まっしぐらだぞ」
「そうだよね」
「おぉ…珍しく物分りがい──」
「ごめんね、ジェイドにばかり構ってラズを疎かにしてしまった…寂しい思いをさせてごめん」
突然目の前にそびえ立ったクオーツの胸筋にぶつかるほっぺがむにゅっと潰れるくらい、クオーツの腕に囲い込まれる。
シーンと落ちる沈黙。
クオーツ以外のその場にいる全員が思ったことだろう。
あぁこれは雷が落ちるやつだ……と。
「~~~さっさと仕事に戻れぇぇぇぇっ!!」
「わぁ」
常にスマートかつ王としての器量の観点からもずば抜けて支持率の高い国王クオーツの、番に怒鳴られ部屋から追い出される情けない姿を国民達は想像すらしないだろう。
そんな嵐吹き荒れる騒々しい現場で、ただひとりすやすや眠るジェイドの寝息だけが平和な日々の象徴だった。
【親バカ】END
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