【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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【SS】慣れない王城での暮らし(4)



 上から見下ろしていた時でも大きく感じていたざわめきはその場に足を踏み入れた瞬間、更に大きな音となり僕の耳を襲う。

 けれど、それに優る目的がその先に待っていた。


 
「母様っ!父様に兄様たちも!」
 
 
 マリンの案内に従いあまり目立たない経路を使ったとはいえホール内に足を下ろした途端、四方から寄せられる視線は避けられない。それらをずんずん掻い潜り抜けた先に見慣れた四人の姿を見つけた瞬間、つい自分の立場を忘れ走り出していた。
 
 
「まぁ、ラズ」
「「「ラズ!」」」
 
 
 手を広げ待ち構えてくれる父様や兄様達をスルーし、迷うことなく飛び込むのは母様の腕の中。フワフワに広がる社交界用のドレスに埋もれながらぎゅぅっと抱きつく僕をふわりと抱き締め返してくれる母様のぬくもりに自然と目尻に涙が浮かんだ。
 
 
「こらこら、この様な場で走ってはダメよ、ラズ。あなたはその場に居るだけで注目される身なのだから、はしたないと言われてしまうわ」
「っズ……ごめんなさい」
「ふふ、でも1ヶ月ぶりに会えて嬉しい。母にお顔を見せて?」
「うぅ…僕も会いたかったです母様ぁ…」
 
 
 成人を迎えたとはいえ親元を離れるにはまだ時期早々であると誰もがわかっていたこと。優しい母の顔を見た途端、自分でも驚くほど心から安心し涙が止まらなくなってしまった。
 
 
「ラズ、父も……」
「私達も……久しぶりのラズを抱き締めたい」
 
 
 そんな親子のやり取りをそばでソワソワ見守っていた父や兄達とも代わる代わる抱擁を交わし、離れていたのはたった1ヶ月とはいえその間変わらないみんなの様子に安心していると、不意に視界に映るもう一人の見慣れた姿。


「え……」


 母様達に会えた嬉しさのあまりさらに欲張った僕の妄想がとうとう幻覚まで見せはじめたのかと自分の目を疑った。

 
「あぁ、そうだった。来月から王宮騎士団に入るこいつも連れてきた」
 
 
 長男ソーダ兄様の彼を呼ぶ声をどこか遠くに感じながら近付いてくるその姿をぼぉっと見つめた。

 普段見慣れている動きやすさ重視のシンプルな格好に身を包むお姿も文句無しにカッコイイが、社交界用に整えられた髪型や着飾る衣装があいまって更にとても輝きを放つそのお姿から目が離せない。
 
 
「ラ、ルド……様……」
「お久しぶりです、ラズ様」
「~~~っ」
 
 
 ふわり、と微笑むその人の姿に見惚れ、今この場で叫び出さなかった事に拍手を送りたい。
 我慢してきたこの1ヶ月分を一気に補填するかのようなご褒美シチュエーションにテンションが上がり、余計なことを口走らないよう必死に口を押さえ込みながら下がっていた気分も有頂天まで上り詰めるかと思われた、そんな時、兄様が放った数秒前の言葉を突如脳が言葉として認識した。


 来月から王宮騎士団に入る───


「って、え…!?」


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