【BL】執着激強Ω王子はα従者を落としたい

カニ蒲鉾

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プロローグ:第一王子の執着心

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 お父様は誰が見てもわかるほどお母様を愛している。
 
 
 聡明で見目麗しい一国の王でありながら、これまではもちろんおそらく今後も生涯一人の王妃しか娶らないアルファの父クオーツと、そんな父に愛され幾つになっても年齢不詳の可愛らしいオメガ、ラズ。ちなみにお母様は生物学上は男だけど、僕を産んでくれたからお母様。
 
 ───二人は運命の番だった。
 
 先に第二の性が覚醒していたお父様は、当時一歳の赤子であったお母様を一目見た瞬間運命だと確信し、成人前の少年が抱くものとは思えないただならぬ執着心を見せていた、と多くの者が語っている。
 そんなお父様からの一途な愛を向けられるお母様の視線の先は別のとある従者へ向けられていた、というのも有名な話。恋愛感情とは別の“推し”への感情。
 隙あらば騎士団の訓練所へ出没する王妃を連れ戻しに行く王の姿はしばしば目撃されていた。
 
 紆余曲折を経てあるべき場所に収まった二人はなんだかんだお似合いの番同士。
 

 そんな二人から生まれたのが僕、クオーツとラズの長子である第一王子ジェイド。僕は父と母二人の性質特徴を良くも悪くも色濃く受け継いだ。
 
 
 
 ◆◇◆◇◆
 
 
 ───天気の良い昼下がり。
 
 王室お抱え家庭教師の授業は休業日。
 父と母は弟を連れ城下の視察という名のデートへ。
 僕はひとり、のんびり城でお留守番。お共に従者をつけて。
 
 
「ねぇラルド」
「はい、ジェイド様」
「いつになったら僕をラルドの番にしてくれる?」
 
 
 まるでティータイムのおやつを聞くかのような軽い口調で繰り出す本気の求愛。
 それを受ける当の本人はいつもの冷静な表情を一切崩さず、背後に控え僕を警護する。
 
 ラルド───お母様の実家に代々仕える騎士の家系であり、お母様が城へ召し上げられると共に独断で騎士団へ入団し実力で騎士団長までのしあがり、お母様の専属護衛騎士となった男。
 嫉妬に激しいお父様が唯一多少の事は目を瞑るお母様の行動の一つ、推し事。ラルドはお母様の推し事の対象者だった。
 自分を守る護衛騎士に抱くお母様のその感情はイマイチよくわかっていないが、お父様に対する好きとは違うものらしい。
 だから僕は遠慮しない。

 生まれてこの方ずっと僕はラルドに恋をしている。
 
 
「……」
「はぁ…さっきだって廊下でメイドと親しげに話してたよね?色目を使われてなかった?ラルドは優しいから女やオメガには強く出れないでしょ?いつ手籠めにされてしまうか…考えただけで僕───そいつを殺してしまいそう」
「……ジェイド様、恐ろしいお考えはおやめください。それに私もアルファですので」
「とか言って、いま僕がラルドに迫っても殴って止めることはできないでしょ?」
「っ」
 
 
 ガタッと音を立て椅子から立ち上がる。
 果たして頭いくつ分違うのだろうか…。ゆっくり歩み寄りながらはるか上にあるラルドの顔をじっと見上げる。
 
 父の端正な顔立ちと、母の可愛らしい目元を兼ね備え天使と言われ育った容姿を持つ僕はオメガ。つい最近、12歳の誕生日を境に第二の性が覚醒した。
 それ以来、これでもかというほどオメガの性質を振りかざし、ラルドに迫っている。
 
 
「っ、ジェイド様、いけません」
「……」
 

 精一杯背伸びをしてやっと届くその太い首に手を回し、引き寄せ、吐息が交わるほど近くに迫っても、この男のアルファとしての本能は僕に牙を向けない。


 お前になら何をされてもいいのに───。
 
 
「はぁ、運命の番が羨ましい」
 
 
 いつまで経っても何も起こらないにらめっこに、先に根を上げるのはいつも僕の方。
 パッと離れ、解放しても顔色ひとつ変えやしない。
 
 
「いつかジェイド様にも現れますよ」
「……お前って、ほんと残酷」
 
 
 親子ほどの歳の離れた一介の従者が、第一王子とどうにかなるとは思っていないのだろう。
 幼心の気の迷い。どうせそう思っているんだ。
 
 僕の気持ちを甘く見て……ムカつく。
 
 こんな事で泣きそうになってる弱い自分にも、ムカつく。
 
 
「っ、ジェイド様、私は───」
「~~っ、ふん!大目に見るのも今だけだから!お父様の執着心を色濃く受け継いだ僕の本気を舐めないでよね!ラルドのばぁぁぁか!!」
 
 
 既成事実だってなんでもいい、イヤでもどうせいつか来る発情期を迎えたオメガの本気の誘惑の前に、余裕でいられるのも今だけだ───


 絶対に落としてやる!!
 
 
 
 
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