3 / 7
1:第一王子の定位置
しおりを挟むそう誓って早や数年───…
特にラルドとの間に進展があったわけでもなく、刻々と浪費されていく時間。元々両親譲りの美貌はここ数年でさらに磨きをかけ、オメガとは言え第一王子である僕にそろそろフィアンセでも、という宰相からの進言をうっとうしくかわす日々に飽き飽きしてしまう。
口うるさい宰相はそう言うが、この国のトップであるお父様とお母様が「ジェイドの好きにすればいい」と言ってくれているのが唯一の救い。
有り難くお言葉に甘え、今日も今日とて日々の日課へと繰り出している。
決まった曜日の決まった時刻に向かう、僕のお気に入りの場所。そこには一見、何の変哲もないとある大木が青々と生い茂っている。
が、別に目的は木ではない。そこからちょっと顔を出せば眼下に広がる騎士団の練習風景。
それを眺められる大木の後ろが僕の定位置だった。
数いる騎士の組み合いの中でもいちだんと目を引くそこには、向かってくる騎士の剣を軽々と受け、げきを飛ばすラルドの姿。もちろんそれが僕のお目当て。
王妃の護衛という重要な任務の合間の限られたラルドの自由時間。その時間を使って元騎士団長であった彼はかつての部下たちの訓練に付き合い汗を流している。そんな大切な時間の邪魔にならないよう、その場所から眺めるこの時間が至福のひとときだった。
「……あ、いまどさくさに紛れてラルドの肩に触れたやつ、大罪。はぁい、顔覚えたよ。減給減給」
時たまそう呟いては人には到底見せられないメモを着々と積み重ねながら王室お抱え騎士団の練習風景を邪魔にならないよう見守り、幸せな時間を過ごしている時だった───
「あ、またアイツ……減給じゃダメだな、クビにしよ」
「ねぇ兄さん?このままじゃ王室から優秀な騎士がいなくなっちゃうよ」
「───っ!?」
いつから背後に居たのか、頭一つ上の方から降ってきた聞き慣れた不意打ちの声に無様にも飛び上がりつつ勢いよく振り返る。
そこには想像通り、常日頃何を考えているかわからない無表情を張り付けた実の弟───ニックスがじとっと僕を見下ろしていた。
「はぁ、毎日毎日よくもまぁ飽きないねぇ?いい加減そろそろ諦めなよ。あの堅物男が兄さんに手を出すわけないんだから」
「……うるさい。あぁ~もうっ!重いおもぉい!頭に顎を乗せるな!引っ付くなぁ!」
「ん~顎を乗せるのに丁度いい」
「きぃぃっ!」
歳下だというのに兄に断りもなくひと周りもふた周りも大きく育った弟に背後からのしかかられ、フラフラになりながら大木に手を付き耐える。
「こんな所までわざわざ嫌味言いに来たわけ?」
「まさか。父様が呼んでる、王宮へ戻ろ」
「……やだ、まだ眺めてたいもん」
「どうせ夕食の時には一緒なんだからその時好きなだけ眺めればいいでしょ」
「……お母様の従者してるラルドはヤ」
首に回るニックスの両腕にぶくっと埋もれながら呟く言葉はお母様の前では絶対に吐き出すことの出来ない本音。
ラルドは今も昔もお母様のそばにいる。
専属護衛騎士として───もしくはそのお役目以上に、いついかなる時も命を賭してお母様を守る、それが永遠の使命であるかのように、お母様を見守るラルドの目がそう語っている。
「お母様にはお父様っていう運命がいるのに……ズルい」
「かわいいなぁ、兄さんは。俺でいいじゃん」
僕の首に巻き付く腕の力がぎゅっと強まる。いつも飄々とした弟の珍しい様子に、頭に感じる重みに抗いながら無理やり視線をあげた。
「は?何言ってるの、ニックスは弟じゃん。冗談言ってないでさっさと僕の代わりにフィアンセ決めてお父様達を安心させてよ」
「……はぁ、ムカつく」
「ん?何か言った?」
「なーにも。さ、戻りますよ~」
「あ、こらっ抱き上げるな!自分で歩ける!」
「はいはい、危ないから暴れない~」
果たしてどちらが年上なのか、と疑われてもおかしくないやり取り。きぃぃっと騒がしい声を張り上げ力いっぱい暴れても、非力なオメガではアルファの弟には敵わない。
どうどうとなだめられながら、泣く泣くその場から引き剥がされた。
71
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜
侑
BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。
婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。
しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。
王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。
転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。
リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて……
婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。
仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。
2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる