4 / 7
2:第一王子と家族団らん(1)
しおりを挟む結局、ニックスに抱えられたまま広い王宮内を進んでいく。
いくら懇願しようとも僕の要求はことごとくスルーされ、すれ違う使用人全てにくすくす笑われ恥ずかしさにも程がある。せめてもの抵抗としてニックスの肩口に顔を埋め、誰からも見られないようにするのが精一杯な僕をクスッと笑う弟が憎らしい。
どさくさに紛れガブッとひと口噛んでやった。
───が、効果はいまひとつのようだ。悔しい!
やっとの事で辿り着いた目的地の前で下ろされ、久々の地面の感触を味わう暇もなく、開いた扉の奥に待ち受けていたのは、お父様のみならずお母様もお揃いだった。
相変わらず仲のいい二人。
広い室内にいくつもあるソファにわざわざ並んで座り、お父様自らフォークを握りお母様にスイーツを与える光景を息子二人はしばしその場で黙って佇み見守っていた。
「んん~っ!おいひ~クオーツ次、次そっち」
「はいはい、ラズが好きそうだなって思って取り寄せてみたけど正解だったね」
「大正解~さすがクオーツ。ラズ様大好きクラブの名誉会長なだけある」
「ふふ、何その嬉しい役職、初めて聞いた。国王辞めてその役職に就こうかな」
「……お前は本気でやりかねないから勘弁してください」
成人した子供が二人もいるとは思えない若々しい見た目同様、会話の内容もいつまで経っても仲睦まじい両親のやり取り。これが日常茶飯事。僕たち兄弟はこれを見て育ってきた。
だからこそ、番という関係性に憧れてしまう。
「あっ、ジェイド、ニックス!やっと来た~おいでおいで、二人も座って!一緒にお茶にしよ」
やっとの事で僕たちに気付きパッとお日様の笑顔を向けるお母様の口元には可愛らしい白いクリームが。
「ラズ、付いてるよ」
「へ……」
言うや否や優雅な指の動きでクリームを拭い取り自然な動作で自分の口元へ持っていくとそのままひと舐め。そんなお父様の行動を、お母様をはじめ僕たちも一緒になってぽかんと見守った。
「うん、甘い」
「ぐぇ~~ゲロ甘~~」
お父様からの愛情たっぷりな視線を独り占めするお母様はお腹いっぱいですとゲンナリして早く早くと僕たちに手招きしていた。
呼ばれるがまま二人揃ってソファに歩み寄るものの、お父様、実の息子達に対して「邪魔するな」っていう視線はやめてください……。
◆◇◆◇◆
昼間から全員で集まってゆっくりできるなんて久しぶりだね、と上機嫌なお母様の笑顔を見ているこっちまでにこにこが伝染していると、お母様の側近であるマリンが慣れた手つきで全員分の新しい飲み物を運んできた。
どうやらこの突然のお茶会はお母様が主催らしい。
ほわりと湯気をたてる目の前に置かれたカップに手を伸ばし、ひと口こくりと喉を潤したタイミングで「ジェイド」と呼ばれる。
「はい、お父様」
「一応確認だけど、先日話したあの件。そろそろ先方に何かしらのリアクションを返さないといけない」
呼ばれたのはそれでか、とすぐに察すると持っていたカップをソーサーに戻す。主催はお母様ではあるものの、用があるのはお父様で間違いなかった。
つい先日も宰相が持ってきた縁談の申し入れ。その返事をいま問われている。
真正面からお父様の視線を受ける。
「今回もお断りでお願いします。僕には心に決めた人がいるので」
実の息子である僕ですら、お父様を目の前にすると迫力で負けそうになる。国王の威厳とその美しさ、その両方が相まって長年近隣諸国とはうまくやっていけているのだ。
それでも、ぐっと視線に強い意志を込め、真正面から見つめ返すこと数秒───先に折れたのはお父様だった。
ふっ、と苦笑をもらしたお父様はやれやれと首をふると「わかったよ」とひと言。たったそれだけでいつの間にか張っていた肩がストンと落ちる。
よかった…まだわがままは通用した。
お父様は僕の顔に弱い。
なぜなら愛するお母様にそっくりだから。
僕たち二人のやり取りを黙って見守っていたお母様とニックスも安心したのか止まっていた時が動き出すかのように家族団らんは再開した。
74
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜
侑
BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。
婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。
しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。
王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。
転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。
リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて……
婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。
仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。
2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる