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2:第一王子と家族団らん(2)
しおりを挟むどうやら、お父様からの呼び出しの要件はさっきの質問が全てだったようだ。
だったらもう少しラルドを眺めていたかったのに…なんて思わなくもないが、多忙な両親とゆっくりできる貴重な時間を素直に楽しむことにした。
特に他愛もない話題を僕とお母様が次から次へと話し、たまに相づちを打ちつつお父様とニックスはその様子を見守るいつもの光景。
話題は自然とあの話へ───
「で?どうなのジェイド。ラルドは落とせそう?」
「~~っ、聞いてくださいお母様!ぜんっぜん相手にされません」
隠すつもりは微塵もない僕のラルドへの気持ちは家族はもちろん従者までもが知る事実。ラルドに変なちょっかいをかけることはすなわち第一王子である僕を敵に回すことだと周囲に威嚇している。
「んん~そっかぁ…。ラルドって昔からそういうところあるよね…身分をわきまえるとか言うけどこっちがいいって言ってるんだからいいじゃんって何度僕もヤキモキしたことか」
「ですよね!別に公衆の面前でキスしろとは言ってないのに、一瞬手が触れただけで過剰に距離取られます……」
ぶくっと膨れて愚痴をこぼせば、思うところがあるのかお父様とお母様がチラッと目配せし苦笑し合うのを向かい側から眺める。
この件に関してお母様は全面的に僕の味方になってくれるものの、お父様は複雑な気持ちがあるらしい。が、お母様が上手くなだめてくれているのだろうか今のところ直接何か言われたわけではない。
それをいい事に、見て見ぬふりで自分の気持ちを貫くまでだ。
「相手にされないどころか、兄さんは遠くから眺めてニヤニヤしてるだけでしょ」
久しぶりに口を開いたかと思えば要らぬ事を言うニックスをキッと睨み付けるも、涼しい顔でお茶を飲みスルーされる。
そこでふと思い出す先程見た訓練での光景。
いい機会だ、お父様にチクろう。
「そうだお父様。騎士団の訓練中、不用意に何度もラルドに接触する者がいました。大罪です。即刻クビにしてください」
「はぁ…相変わらずラルドが関わると判断が極端になるねぇ。一旦落ち着こうか、そう簡単にクビにしていたらせっかく厳しい審査を通過した優秀な騎士がいなくなってしまう」
「そうだよ、ジェイド。王族がそうすぐにクビとか言ってたら非道な王子って噂されるよ、噂って怖いんだから、気を付けな?」
お父様とお母様二人から諭され、再びぶくっと頬を膨らませていると知らぬ顔でお茶を飲んでいたニックスが突然「あ」と声を上げる。
「そういえば父様、さっき母様に笑顔を向けられてデレデレしてる給仕がいましたが…新人でしょうか」
「それはいけないな。まったく教育がなってないね、教えてくれてありがとうニックス。私直々に指導しよう。マリン、後で該当給仕に私のもとまで来るよう伝えなさい」
「……マジすか」
あまりの変わり身の速さにぽかんと呆気に取られる僕とお母様、そして、突然流れ弾が飛んできたお母様の側近マリンはポロリとそう呟いた。普通、国王に対して使用人がそんな態度を取れるはずもないのだが、このマリンともう一人お父様の側近でありマリンの双子の片割れトールは特別だった。
昔からお父様とお母様を支えてきた筆頭の二人。
こんな無茶ぶりにも慣れているのだろう。二つ返事で承諾せず、やってんなぁという表情を隠すことなく主人であるお母様に視線を向ける。
それが正解。
お父様の暴走を止められるのはお母様だけ。
「ちょっとクオーツ、そんな暇じゃないでしょ、仕事して。またトールに怒られるよ?」
「ホントですよ、クオーツ様のせいでうちのトールの胃に何個穴開けるんすか勘弁してください。俺らももう若くないんだから徹夜は堪えるんですって」
「トール可哀想…」
「でしょでしょ、もっと言ってやってくださいラズ様」
うるうる目を潤ませる主人と側近の茶番劇。
それを一身に受けるお父様はマリンのほうには目もくれず、お母様をきゅっと抱きしめる。
「トールの代わりにラズがずっとそばに居てくれれば仕事も捗るのに」
「「「いや、逆効果だろ」」」
お父様以外の全員の声が綺麗に一致した。
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