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第一章【新生活】
1-1 入学式(1)
しおりを挟む『ただいまより、王立セントアール魔法学院入学式を執り行います新入生起立―――』
魔法による拡声器で三階建てオペラ構造の豪華な講堂内にアナウンスが響き渡るここは、王立セントアール魔法学院。そこで本日、新たに魔法を学ぶべくやってきた新入生50名の入学式が執り行われていた。
王制をとるこの国の民の中には生まれつき魔力を持って生まれるものが一定数存在する。
長年の記録からわかっていることは、魔力は必ず男のみに現れ、女には無いこと、魔力を持たない男もいること、この2つは絶対だった。
魔力を持つ男、魔力を持たない女と男、これらが手と手を取り合い暮らすセントアール国――が、実際のヒエラルキーは魔力持ちに傾いていた。
王族や貴族はもちろん、それらを守る騎士団や兵達、そしてそこそこの商人も、だいたいが何かしらの魔力を持ち、こぼすことなく全員がセントアール魔法学院に通う事を義務付けられ卒業している。それは生後まもなく行う魔力の検査で魔力持ちの子を見出し管理する事で、将来その力を悪用させない為だった。
魔法というのは、杖と呪文を媒体に五大要素を用いた基本魔術と、個人に与えられた何かに特化した特殊魔法の2種類に分けられ、普段それらは特別な許可がない限り日常生活での使用を禁じられていた。その為、生を受け、魔力を持つとわかったとしても初めてそれを使用するのは大抵が魔法学院に入学してからと決まっている。
そんな初めての魔法を学ぶ学び舎、王立セントアール魔法学院は普段人々が生活する世界とは別の世界に存在する。
院長の許可を得た者が、どこにでもある適当な扉に特別な魔法陣を描いた時、魔法の力が発揮し異世界へと繋がる扉へと変貌する。それをくぐると途端、世界は一変し物語の世界に迷い込んだかのように遥か彼方の空には竜が飛び、禁じられていた魔法を使って生活をする、そんな巨大都市の中心に全寮制の学院が鎮座していた。そこで少年たちは17歳から20歳までの4年間を過ごし、あらゆる魔法や体術などを身につけ将来の就職先を決めるのだった。
講堂内、一階の前方に陣取る見るからにおろしたてのカッチリとした黒地の制服とおなじく黒地のマントを着用し正装に身を包む新入生総勢50名が一斉に立ち上がった。その中の一人、ラウル・ラポワントもまた新入生の一員として期待に頬を赤く染め、一糸乱れぬ動きに合わせてキビキビと頭を下げた。
周りの新入生に比べ頭一つ小さい、幼さの残るラウルは触り心地の良さそうなミルクティカラーのふわふわマッシュに似合うお日様笑顔を終始貼り付けながら式が始まった途端見つけてしまった後ろ姿を熱心に見つめていた。壇上には一切目もくれず、その後ろ姿だけを。
この数年間、手紙のやり取りだけで我慢してきた寂しい日々…そんな日とも今日でおさらば、この日が来るのをどれだけ待ち望んでいたか……
『続いて、在校生挨拶。在校生代表――3年リカルド・ラポワント』
「はい」
耳触りの良い凛とした声が講堂内にこだまする。
その人が立ち上がった瞬間、ラウルは手がはち切れる勢いで誰にも負けない拍手をかき鳴らし、壇上へ向かうリカルドの背中をじっと見つめた。
彼が歩く度はためくマント。絶対にいい匂いがするに違いないとこの距離で確信できるほどの爽やかさを残し壇上にたどり着いた彼が正面を向き一礼して顔を上げる。
自分と同じ制服正装を身につけているとは到底思えないくらいこの学院の制服――襟に細い黒線の入った白シャツに赤のネクタイ、金のボタンが2列で6つ並ぶ黒地のジャケット、黒地の細身のパンツ、黒の編上げブーツ、黒のマントと全身真っ黒な装いは、長身の金髪碧眼のあまいマスクを兼ね備えたまるで童話の中から出てきた王子様のようなリカルドにとても良く似合っていた。この学院の制服は彼のためだけに作られたのではないかと思えるほどその素敵な姿に酔いしれ、ラウルは穴があくほど熱心に見つめていた。
リカ様――リカルド様!会いたかった…本当にお会いしたかったです…また今日からリカ様の近くで過ごせます…!
この場で号泣しなかっただけ褒めて欲しい、そう思うくらい心の中でリカルドへの想いを叫びながら、最後の最後まで手を叩き続けていた。
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