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第二章【記憶】
2-16 それぞれの思い(2)
しおりを挟むラウルが戻って5分もしないうちに、記念すべき初めての授業は終わりを迎えた。
冒頭の、魔力の成り立ちの説明と自分の測定以降ほぼ席を外していたため、ラウルとしてはもう終わっちゃった…という物足りない感想を抱きなかなか動けないでいると「ラウル?」とレオンハルトに声をかけられ我に返る。
とっくにシリルは退出し、周りも続々と立ち上がる中、ぽけっと座り続けるラウルにやっぱり何かあったのかとレオンハルトは内心心配しつつ声をかけていた。
「どうしたラウル、次は別の教室で杖作りの講義だぞ」
「えっと…あっという間に終わってしまったので…学園生活についてラポワントの御屋敷でいろんな物語を読んで事前に予習していたんですけど、その中にあった強烈な眠気と戦うくだりを覚悟していたのにまったく実感できなかったです…」
「なんつー本読んでんだよ」
「いだっ」
おでこをべちっとはたかれ、うぅぅっと唸っていると、呆れた顔で立ち上がることを促すレオンハルトに従ってよろよろと立ち上がる。
「ほら次の教室行くぞ」
「次こそはしっかり授業受けます!楽しみです~」
「はいはい、ほらこっち」
「はい~~」
「……」
レオンハルトの背中を追い小走りで教室を出ていくラウルは気づかない。その姿をじっと追いかける視線は一つや二つでは無かった。友好的とも攻撃的とも言えない、ただじっと見るだけの粘着質な視線。
だがそんな視線の気配も、ラウルが見えなくなればいまだ教室に残っている生徒の喧騒に紛れきれいさっぱり消え去っていた。
授業と授業の合間は20分程。
休憩も兼ねたその時間で全校生徒は素早くこの広い学院内を移動している。
ラウルとレオンハルトも遅れないよう若干早歩きになりつつ会話をしながら廊下を歩いていた。
ちなみに、当然の事ながら次の授業が行われる教室への行き方は全てレオンハルトに任せ、ただ着いていくだけのラウルは一切道順を覚える素振りも見せず、次の授業へ思いを馳せていた。
「杖作り楽しみですね~」
「そーね」
この学院に来て見た杖は今のところリカルドの杖とシリルの杖くらいだった。どちらの杖も見た目が全く違い、それぞれの雰囲気にあっているな…と漠然と思った。
杖の役割、見た目や装飾など詳しい事はこれからの授業で聞くことだが、無くしたり折ったりしない限り一生共にする相棒を生徒は真剣に考え作る。ラウルもまた、かっこいいマイ杖作るぞ、と鼻息荒く気合が入っていた。
やって来た教室は今まで使った講義型の構造とは違い、長方形の机を6人で囲って座る実習型の教室だった。黒板に向かって縦向きに置かれた机が横3、縦2で合計6台入っている。
今回も席は自由らしく、比較的二人の移動が早かったのか埋まっている席は疎らで選びたい放題だった。二人の総意は迷うことなく後ろの方の目立たない席。まだ誰も座っていない窓際の2列目の席へラウルが前レオンハルトがその後ろに並んで座ることにした。
「レオくんは杖どんなのにしますか?」
「コンパクトで邪魔じゃないやつ…」
「えぇ……もっと色とか形とかの見た目の話で盛り上がりたかったのに…レオくん超絶つまらない男ですね――っ!?くぁー…」
「黙れポメ」
げんなり、と素直に顔に出すラウルの表情に無性にイラッとし、容赦なくデコピンを叩き込んだレオンハルトだった。
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