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1【妊娠】

1-23 安定期

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 楓真くんとの久しぶりの行為で満たされ安定したのか、あれから数日たった現在、毎日見ていた悪夢はもうほぼ見ることが無くなった。たまに見て夜中目覚めたとしてもゆっくり深呼吸を繰り返し逸る心臓を落ち着かせ、隣に眠る楓真くんにくっついて目を閉じれば再び眠ることができた。
 不眠症は解消に向かっていた。
 そしてさらにこの段階でつわりもだいぶ治まり、以前よりは食べ物を口にすることができるようになってきた。
 食と睡眠が改善されれば体調はみるみる良くなり、とうとう安定期へと進んでいく。
 
 
 
「先輩お腹出てきましたねぇ」
「だよね、気づいたらぽっこり」
「双子ですもんね、これからもっと大きくなっていくんだぁ…なんか、ほんと神秘ですよねここに二人も赤ちゃんがいるんだもんなぁ」
「そうだね…」
 
 
 朝、出勤するとまず席につき一息つくのが最近の日課となっていた。
 平らだったお腹は今ではポコっと丸みを帯び、なんとかスーツのジャケットはとまっているが正直ギリギリの状態で、とまらなくなるのも時間の問題だった。
 そんな日々変わっていく僕を後輩の花野井くんは毎日気遣ってくれる。花野井くんだけでなく、水嶋さん、瀧川くんも、秘書課チームの厚いサポートはとてもありがたかった。
 
 不思議そうに僕のお腹を触る花野井くんは、んん…と集中したかと思えば、動かないですねぇ…と呟いていて、まだ動かないかなと笑ってしまった。
 
 
 
「社長のところへスケジュール打ち合わせ行ってきます」
「はいよ、気をつけて行ってこい~」
 
 
 タブレットを持ち、声をかけて席を立つと三者三葉返事を返してくれる、そんな温かいメンバーに見送られ秘書室を出ると一人まっすぐ社長室へと向かった。
 まだまだこれから大きくなるお腹は全然初期値だというのに身体は重く感じ、動きも鈍くなる。病院で見た妊娠後期の妊婦さんを改めてすごいと感じていた。
 
 
 ゆっくりした足取りで社長室前へたどり着くと他の部屋とは違うしっかりした作りの扉を3回ノックし、返事を待つ。
 はい、という楓珠さんの声を確認し扉を開ける為ドアノブへ手をかける前に勝手に内側へと開いていく扉を呆然と見つめると中からニコニコ笑顔の楓真くんが迎えてくれた。
 
 
「いらっしゃいつかささん」
「楓真くん…来てたんだ」
「父さんに呼ばれてね。さ入って入って」
 
 
 楓真くんに促され社長室へ入室すると、デスクに座り電話の真っ最中な楓珠さんがソファへ座るよう合図を送ってくるのを会釈で受け止めた。
 
 
「父さんの電話すぐ終わると思うんで座って待ってよ。……あ、てかスーツのボタン全部閉めるのやめなって言ったじゃないですかキツイでしょ~?」
 
 
 も~っと言いながら甲斐甲斐しくボタンを外していく楓真くんに苦笑しながらされるがまま。全て外し終えると満足そうに頷く楓真くんに導かれ入口に背を向ける位置のソファへと並んで腰を下ろした。
 
 
 
「ごめんね、お待たせ」
 
 
 数分後、電話を終えた楓珠さんも向かいのソファへ腰を下ろし御門家3人が揃った。
 
 
「朝のスケジュール確認の前につかさくんの産休をいつからにするかそろそろ決めておこうと思って、楓真くんも呼んだんだ」
 
 
 普段、朝のこのタイミングにはいない楓真くんがここにいる理由がすぐにわかり納得する。
 
 
 
 
 
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