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2【子育て日記】
2-5 忘れ物(3)
しおりを挟むエレベーターに乗り込むまでにたくさんの人が声をかけてきてくれた。
丁度昼時だったこともあり遭遇する人が多く、僕に対してお久しぶりです、と言ってきてくれる声もあれば、スーツ姿で赤ちゃんを抱く楓真くんに飛ぶ声、そして一番多かったのが双子に対するかわいいちっちゃいという女性の黄色い声だった。
たくさんの知らない人に囲まれても二人は泣くことも無く愛想よく振舞ってくれ、親としてどこか誇らしく思えた。
エレベーターの中で家族4人だけになると、すかさず楓真くんに抱かれたままの楓莉くんとつくしくんに声をかける。
「ふぅくん、つぅくん、いい子にできて偉いねぇ~」
「ほんとに!さすがつかささんの子であり、俺の子。ママに褒められる為の点数稼ぎを心得てる」
「「んふふ~」」
楓真くんの言葉に呆れながら違うでしょ、と突っ込もうとした僕より先に二人がにんまり笑うから「え、そうなの!?」と驚いてしまう。「さすが俺の子、天使たち~~!」と抱っこひもごと二人を抱き込む楓真くんとキャッキャ楽しそうに笑う双子が見てて癒しだった。
まもなく13階で止まったエレベーター。
久しぶりのフロアに足を踏み入れ、ここも何一つ変わっていない光景に感慨深い気持ちになっていると、「つかささん行きましょ」と楓真くんに呼ばれる。楓真くんの腕の中では笑顔で僕に手を振る子供たち。こんな光景を、右も左もわからないまま楓珠さんのお世話になりながら入社した19歳の僕は想像しただろうか……
愛する番と、その子供たちと並んで歩くこの幸せを―――。
これが夢ではないと実感するべく、楓真くんの隣に並び、子供たちに両の手を伸ばす。すぐさま小さな手にきゅっと握られるそれぞれの人差し指がじんわり暖かかった。そんな僕を優しく見つめてくれる楓真くんの視線に気付くと、二人して無言で笑いあった。
とんとん、とリズミカルにノックをして、すぐさま返ってくる「どうぞ」の声。
重厚な社長室のドアを開けると、笑顔の楓珠さんが出迎えてくれた。
「つかさくん、いらっしゃいわざわざアホな息子のためにごめんねご苦労さま」
「お疲れ様です楓珠さん。子供たちも連れてきたので少し騒がしくしてしまうかと思いますが…」
「全然!孫たち~~じぃじだよ~~」
「「じぃ~~っ!」」
楓真くんに抱かれた双子に駆け寄る楓珠さんに、双子は嬉しそうに手を伸ばす。あまりにも二人がそれぞれじたばた暴れるものだから、一旦下ろそうと、僕が勤務中には見かけ無かった部屋の片隅に置かれたフカフカの丸いカーペットを楓珠さんが指さす。
「父さん、いつでも双子が来てもいいように随分前にカーペットをこの部屋に入れたんです。掃除も毎日自分でしてるんですよ」
「え!?そうなんですか!?」
「愛する孫を眺めながら仕事をしたいというじじぃの欲望です気にしないでください」
うんざり顔で説明する楓真くんに対し、そういうこととニコニコ笑顔の楓珠さんは「ささ!早く下ろして」とカーペットへ誘導する。
久しぶりに地面に足をおろし解放された双子は嬉しそうにフカフカのカーペットの手触りを確認すると早速二人してゴロンと寝転がった。直径大人の身長くらいある丸いカーペットは二人にはとても大きく、ゴロゴロ全力で転がってもはみ出ることはなさそうでキャッキャ楽しんでいる。
「癒しだ……」
「俺もこの光景を眺めながら仕事したい…」
ぼそりと呟き合う御門親子に苦笑していると、扉をノックする音が聞こえてくる。昼休憩とはいえ緊急の仕事が入ってくるのは珍しくない事を知っているため、邪魔になってはいけないと双子を回収しようと慌てる僕に「大丈夫だよ」と楓珠さんが笑う。
「私が呼んだんだ」
そう言うと、どうぞと扉に向かって返事を返し、まもなく開いた扉から顔を出した顔ぶれに僕まで嬉しくなった。
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