【本編完結】欠陥Ωのマタニティストーリー

カニ蒲鉾

文字の大きさ
35 / 69
2【子育て日記】

2-6 忘れ物(4)

しおりを挟む

 
 
「あっ先輩~~!お久しぶりです!」
「花野井くん!」
「よ、橘お疲れさん」
「先輩お疲れ様です」
「水嶋さんに瀧川くんも、皆さんお久しぶりです」
 
 
 失礼しますと入ってきたのは産休育休をいただいて以来会っていなかった秘書室の3人だった。
 相変わらず元気にぴょこんっと駆け寄って来てくれる花野井くんを受け止め、上司の水嶋さんに会釈をし、花野井くんの襟を引っ張る瀧川くんに笑う。この久しぶりの感覚にほっこりしながらもふと今が貴重な昼休憩だと気付き嬉しさと共に申し訳なさも生まれる。
 
 
「皆さんすみません昼休憩中に…」
「全然です!先輩に会いたかったしお子ちゃん達にも会いたかったし――あっいた~~!!」
 
 
 笑顔で大丈夫と言いながらキョロキョロ何かを探す花野井くんは、しゃがんだ楓真くんの膝に絡んでいる双子を見付けると目を輝かせ近付いてもいいですか!?と聞いてくる。
 
 
「ぜひ。遊んであげて」
「わーーーいっ!楓真くん僕にも抱っこさせて!」
 
 
 すぐさま楓真くん達の元へ駆け寄る花野井くんはカーペットに膝をつけると双子たちと同じ目線で手を振り人懐っこい笑顔で双子へ接触をはかる。
 
 
「こんにちは~花ちゃんですよ~」
「ふぅくん、つぅくん、花ちゃんだよこんにちは~してあげて」
 
 
 楓真くんに背中を支えられながらぽてんと座る楓莉くんとつくしくん。初めて見る花野井くんのにこにこ笑顔を好奇心旺盛にまじまじと見つめ続けたかと思えば、二人の中で何か整理がついたのか、ふにゃと笑い手を上げ花野井くんに最大級の愛想を振る舞いだした。
 
 
「は~ちゃ」
「ちゃ~~」
「ぎゃんかわぁぁぁ~~~っ」
 
 
 悶絶する花野井くんの姿をソファに移動した四人でおもしろおかしく眺めていると、斜め前に座った水嶋さんがまじまじと双子を見ては楓珠さん楓真くんへと視線を移す。
 
 
「何かな?水嶋くん」
「いやぁ、御門の顔面DNAはやっぱり強いんだなと思っただけよ。楓珠と楓真にそっくりだな特に右の方」
「こら水嶋くん、楓莉くんって呼ぶように」
 
 
 めっ、と注意を飛ばす楓珠さんに面倒くさそうな表情を隠さない水嶋さん。ローテーブルを挟み向かい合って座った社長と秘書という関係以上に長年ともに過ごしてきた同級生の雰囲気を久々に味わっていると、目の前の瀧川くんがあの、と声をかけてくる。
 
 
「ん?」
「先輩は職場復帰されますよね…?」
「その予定だけど…どうかした?あ、もしかしてもう僕の席ない?」
「いやいやありますそのままです。先輩が休みに入ってから改めて先輩の有難みを感じてました…俺だけじゃあの二人のお守りは無理です…」
「あ……」
 
 
 仕事はできて頼りになるがかなりのゴーイングマイウェイな水嶋さんと、元気でおっちょこちょいな花野井くん。そこに静かで責任感の強い瀧川くんが一人残される図は確かに想像するとカオスかもしれない。
 
 
「確かに大変だよね…仕事の方は大丈夫そう?何か困ったことがあれば気にせず連絡してね」
「すみません、その時はお言葉に甘えます」
 
 
 ぺこりと頭を下げる瀧川くんににっこり微笑んでいると、途端瀧川くんの表情がピシッと固くなる。それはまるで恐ろしいものに遭遇してしまったかのような表情に突然どうしたのか、不思議に思い彼の視線を追うと、それは僕の後ろ頭上に向いていた。
 頭にハテナを浮かべつつ後ろを振り返ると、そこにはつくしくんを抱いた楓真くんがずんっと異様なオーラを放ち立ち尽くしている。
 想像よりもすぐ真後ろに居るものだから僕まで驚き「わっ」と変な声が出てしまったのを恥ずかしく思いながらいまだ瀧川くんを見つめ続ける楓真くんをバシッと叩いた。
 
 
「何やってるの楓真くん、びっくりしたなぁ」
「悪い虫の気配がしたので…」
「あははっ!たっきー楓真くんに睨まれてビビってるぅ」
「花野井うるさいっ」
 
 
 楓莉くんを抱いた花野井くんまで合流すると、三者三様自由に口を開き一気に賑やかさが増すこの雰囲気に感じる居心地の良さ。
 水嶋さん、花野井くん、瀧川くん――家族の次に大切な職場の上司と後輩達。
 妊娠期間からずっと多くの迷惑をかけてしまった分、必ず恩を返さなくては、と改めて職場復帰を強く決心できた瞬間だった。
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

サクラメント300

朝顔
BL
アルファの佐倉は、過去に恋人を傷つけたことで、贖罪のための人生を送ってきた。 ある日不運な偶然が重なって、勤務先のビルのエレベーターに閉じ込められてしまった。 そこで一緒に閉じ込められたアルファの男と仲良くなる。 お互い複雑なバース性であったため、事故のように体を重ねてしまう。 ただの偶然の出会いのように見えたが、それぞれが赦しを求めて生きてきた。 贖罪の人生を選んだ佐倉が、その先に見つける幸せとは…… 春らしく桜が思い浮かぶようなお話を目指して、赦しをテーマに書いてみました。 全28話 完結済み ⭐︎規格外フェロモンα×元攻めα ⭐︎主人公受けですが、攻め視点もあり。 ※オメガバースの設定をお借りして、オリジナル要素を入れています。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

勘違いへたれアルファと一途つよかわオメガ──ずっと好きだったのは、自分だけだと思ってた

星群ネオン
BL
幼い頃に結婚の約束をした──成長とともにだんだん疎遠になったアルファとオメガのお話。 美しい池のほとりで出会ったアルファとオメガはその後…。 強くてへたれなアルファと、可愛くて一途なオメガ。 ありがちなオメガバース設定です。Rシーンはありません。 実のところ勘違いなのは二人共とも言えます。 α視点を2話、Ω視点を2話の後、その後を2話の全6話完結。 勘違いへたれアルファ 新井裕吾(あらい・ゆうご) 23歳 一途つよかわオメガ 御門翠(みがと・すい) 23歳 アルファポリス初投稿です。 ※本作は作者の別作品「きらきらオメガは子種が欲しい!~」や「一生分の恋のあと~」と同じ世界、共通の人物が登場します。 それぞれ独立した作品なので、他の作品を未読でも問題なくお読みいただけます。

有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。 しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。

処理中です...