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2【子育て日記】
2-6 忘れ物(4)
しおりを挟む「あっ先輩~~!お久しぶりです!」
「花野井くん!」
「よ、橘お疲れさん」
「先輩お疲れ様です」
「水嶋さんに瀧川くんも、皆さんお久しぶりです」
失礼しますと入ってきたのは産休育休をいただいて以来会っていなかった秘書室の3人だった。
相変わらず元気にぴょこんっと駆け寄って来てくれる花野井くんを受け止め、上司の水嶋さんに会釈をし、花野井くんの襟を引っ張る瀧川くんに笑う。この久しぶりの感覚にほっこりしながらもふと今が貴重な昼休憩だと気付き嬉しさと共に申し訳なさも生まれる。
「皆さんすみません昼休憩中に…」
「全然です!先輩に会いたかったしお子ちゃん達にも会いたかったし――あっいた~~!!」
笑顔で大丈夫と言いながらキョロキョロ何かを探す花野井くんは、しゃがんだ楓真くんの膝に絡んでいる双子を見付けると目を輝かせ近付いてもいいですか!?と聞いてくる。
「ぜひ。遊んであげて」
「わーーーいっ!楓真くん僕にも抱っこさせて!」
すぐさま楓真くん達の元へ駆け寄る花野井くんはカーペットに膝をつけると双子たちと同じ目線で手を振り人懐っこい笑顔で双子へ接触をはかる。
「こんにちは~花ちゃんですよ~」
「ふぅくん、つぅくん、花ちゃんだよこんにちは~してあげて」
楓真くんに背中を支えられながらぽてんと座る楓莉くんとつくしくん。初めて見る花野井くんのにこにこ笑顔を好奇心旺盛にまじまじと見つめ続けたかと思えば、二人の中で何か整理がついたのか、ふにゃと笑い手を上げ花野井くんに最大級の愛想を振る舞いだした。
「は~ちゃ」
「ちゃ~~」
「ぎゃんかわぁぁぁ~~~っ」
悶絶する花野井くんの姿をソファに移動した四人でおもしろおかしく眺めていると、斜め前に座った水嶋さんがまじまじと双子を見ては楓珠さん楓真くんへと視線を移す。
「何かな?水嶋くん」
「いやぁ、御門の顔面DNAはやっぱり強いんだなと思っただけよ。楓珠と楓真にそっくりだな特に右の方」
「こら水嶋くん、楓莉くんって呼ぶように」
めっ、と注意を飛ばす楓珠さんに面倒くさそうな表情を隠さない水嶋さん。ローテーブルを挟み向かい合って座った社長と秘書という関係以上に長年ともに過ごしてきた同級生の雰囲気を久々に味わっていると、目の前の瀧川くんがあの、と声をかけてくる。
「ん?」
「先輩は職場復帰されますよね…?」
「その予定だけど…どうかした?あ、もしかしてもう僕の席ない?」
「いやいやありますそのままです。先輩が休みに入ってから改めて先輩の有難みを感じてました…俺だけじゃあの二人のお守りは無理です…」
「あ……」
仕事はできて頼りになるがかなりのゴーイングマイウェイな水嶋さんと、元気でおっちょこちょいな花野井くん。そこに静かで責任感の強い瀧川くんが一人残される図は確かに想像するとカオスかもしれない。
「確かに大変だよね…仕事の方は大丈夫そう?何か困ったことがあれば気にせず連絡してね」
「すみません、その時はお言葉に甘えます」
ぺこりと頭を下げる瀧川くんににっこり微笑んでいると、途端瀧川くんの表情がピシッと固くなる。それはまるで恐ろしいものに遭遇してしまったかのような表情に突然どうしたのか、不思議に思い彼の視線を追うと、それは僕の後ろ頭上に向いていた。
頭にハテナを浮かべつつ後ろを振り返ると、そこにはつくしくんを抱いた楓真くんがずんっと異様なオーラを放ち立ち尽くしている。
想像よりもすぐ真後ろに居るものだから僕まで驚き「わっ」と変な声が出てしまったのを恥ずかしく思いながらいまだ瀧川くんを見つめ続ける楓真くんをバシッと叩いた。
「何やってるの楓真くん、びっくりしたなぁ」
「悪い虫の気配がしたので…」
「あははっ!たっきー楓真くんに睨まれてビビってるぅ」
「花野井うるさいっ」
楓莉くんを抱いた花野井くんまで合流すると、三者三様自由に口を開き一気に賑やかさが増すこの雰囲気に感じる居心地の良さ。
水嶋さん、花野井くん、瀧川くん――家族の次に大切な職場の上司と後輩達。
妊娠期間からずっと多くの迷惑をかけてしまった分、必ず恩を返さなくては、と改めて職場復帰を強く決心できた瞬間だった。
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