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するり、と長い指が頬を撫ぜる。確かめるように輪郭を辿るその仕草に身体が小さく震える。触れられた箇所からじわじわと熱が広がるような感覚に思わず目を閉じた。
「……あの、廣瀬」
「何ですか、先輩」
耳元で囁かれる声がくすぐったい。
「ここ、まだ玄関だから……」
「ああ、そうですね」
「そうですね、じゃなくて……っ」
文句を言っても止まる様子のないまま、彼は俺の首筋へと顔を埋めてくる。くっついた肌の温もりが心地良いけれど、このままではここで押し倒されかねない勢いだった。慌てて彼の胸を押し返してみるものの、びくりともしない。
今日は金曜日の夜。お互いの仕事が終わったところで待ち合わせをして、一緒に食事をした後、そのまま廣瀬の家へ来たのだ。明日は休みだしゆっくりできるねなんて話をしながら玄関に入った途端、これだ。期待していなかったと言えば嘘になるけれど、いくら何でもいきなりすぎるだろう。
「ちょっ、と……!」
制止の声も聞かず、シャツの中に潜り込んでくる手を必死に押し止める。しかしそれも虚しく、彼の手はそのまま上の方へと滑っていく。ひんやりとした手が脇腹に触れ、小さく息を呑んだ。
「ん……っ」
背中をなぞられて思わず漏れそうになった声を飲み込む。駄目だってば、と言いたいのに言葉にならない。
「ふ、っ…………ぁ」
優しい手つきとは裏腹に、触れる唇や舌の動きはどんどん大胆になっていく。時折強く吸われる度に甘い痺れが走り、身体の奥が疼いた。抵抗していたはずの腕には力が入らず、気づけば彼にしがみつくようにして身を委ねている自分がいる。
「っ、がっつきすぎ……」
「すみません、久しぶりに会えたのでつい」
ようやく解放されて文句を言うと、廣瀬は悪びれる様子もなく微笑んでみせる。
「先週も会ったけど」
「一週間も我慢したんですよ?」
眉根を寄せて切なげな表情を浮かべる彼に、不覚にも胸が締め付けられるような感覚を覚える。そんな顔をされたら何も言えなくなってしまうのに。
「一週間ぶりなんだからもっと先輩を感じたいし、たくさん触りたいんです」
良いですよね、と熱を帯びた声で問いかけられるだけで、心臓が激しく波打つ。いつの間にか腰にはしっかりと腕を回されていて逃げることもできない。こういうときの彼は意外と強引だ。そしてそれを許してしまうくらい、彼に対してどうしようもないほど溺れてしまっている自分がいる。
このまま流されてしまっても良いかもしれない、と思ったそのときだった。甘やかな雰囲気を壊すように、不意にインターホンが鳴った。突然の出来事に驚いて肩が大きく跳ね上がる。咄嵯に身を離すと、廣瀬はどこか面白くなさそうな顔でドアの方を見つめていた。
「……あの、廣瀬」
「何ですか、先輩」
耳元で囁かれる声がくすぐったい。
「ここ、まだ玄関だから……」
「ああ、そうですね」
「そうですね、じゃなくて……っ」
文句を言っても止まる様子のないまま、彼は俺の首筋へと顔を埋めてくる。くっついた肌の温もりが心地良いけれど、このままではここで押し倒されかねない勢いだった。慌てて彼の胸を押し返してみるものの、びくりともしない。
今日は金曜日の夜。お互いの仕事が終わったところで待ち合わせをして、一緒に食事をした後、そのまま廣瀬の家へ来たのだ。明日は休みだしゆっくりできるねなんて話をしながら玄関に入った途端、これだ。期待していなかったと言えば嘘になるけれど、いくら何でもいきなりすぎるだろう。
「ちょっ、と……!」
制止の声も聞かず、シャツの中に潜り込んでくる手を必死に押し止める。しかしそれも虚しく、彼の手はそのまま上の方へと滑っていく。ひんやりとした手が脇腹に触れ、小さく息を呑んだ。
「ん……っ」
背中をなぞられて思わず漏れそうになった声を飲み込む。駄目だってば、と言いたいのに言葉にならない。
「ふ、っ…………ぁ」
優しい手つきとは裏腹に、触れる唇や舌の動きはどんどん大胆になっていく。時折強く吸われる度に甘い痺れが走り、身体の奥が疼いた。抵抗していたはずの腕には力が入らず、気づけば彼にしがみつくようにして身を委ねている自分がいる。
「っ、がっつきすぎ……」
「すみません、久しぶりに会えたのでつい」
ようやく解放されて文句を言うと、廣瀬は悪びれる様子もなく微笑んでみせる。
「先週も会ったけど」
「一週間も我慢したんですよ?」
眉根を寄せて切なげな表情を浮かべる彼に、不覚にも胸が締め付けられるような感覚を覚える。そんな顔をされたら何も言えなくなってしまうのに。
「一週間ぶりなんだからもっと先輩を感じたいし、たくさん触りたいんです」
良いですよね、と熱を帯びた声で問いかけられるだけで、心臓が激しく波打つ。いつの間にか腰にはしっかりと腕を回されていて逃げることもできない。こういうときの彼は意外と強引だ。そしてそれを許してしまうくらい、彼に対してどうしようもないほど溺れてしまっている自分がいる。
このまま流されてしまっても良いかもしれない、と思ったそのときだった。甘やかな雰囲気を壊すように、不意にインターホンが鳴った。突然の出来事に驚いて肩が大きく跳ね上がる。咄嵯に身を離すと、廣瀬はどこか面白くなさそうな顔でドアの方を見つめていた。
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