VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第9話 その夜の運営サイド

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 日本某所にある某ゲームの運営チームと開発スタッフは、サービス開始日ということもあって厳戒態勢でチートなどの不正行為、ユーザーからの問い合わせの対応に奔走していた。

 時刻は午後8時過ぎ。運営チームの各責任者と開発スタッフの中で一定以上の権限を持つ者たちはサービス開始初日に発生した問題についてのミーティングが行われていた。

 現在の議題は運営チームと開発スタッフにとって想定外だったサービス開始初日のワールドアナウンスについてだ。

「サービス開始初日から"信徒の素質"どころか"覚醒"の情報まで拡散することになるとは……」

「現段階で覚醒を獲得したプレイヤーとそれ以外のプレイヤーでステータスに倍どころでない差が出ています。チートやバグを利用した形跡は?」

「ゲーム内の掲示板で既に"信徒の素質"の獲得方法が拡散しているのは問題ないでしょう。元々ヒントとなる情報はアルテラの住民との親密度が一定値を超えれば手に入ります。いずれ拡散した情報ですから特に何かする必要はないでしょう」

「問題の彼のログを確認した。どうやら錬金術師ルーメス・トリスの店で"旧い地図"と"灰真珠"を購入後、例のバグが発生している西の森でエリアネームドに殺されている。その後、彩神の神像に"灰真珠"を捧げたことで"灰神の使徒"に"覚醒"している。そして"覚醒の試練"については、安藤君から頼む」

 "覚醒の試練"とは覚醒を手に入れたプレイヤーが強制的に受注させられるクエストのことだ。そのクエスト内容はそれぞれの覚醒先によって異なるが、原則として最初の"覚醒の試練"は初見のプレイヤーでも簡単にクリアできる難易度に調整されている。

「はい。"灰神の使徒"と"蒼神の使徒"の試練窟のマップデータが入れ替わっていたことで最初の"覚醒"にも関わらず彼と"蒼神の使徒"との間で戦闘が発生してしまいました」

「それって2柱以上の神の使徒に就任させないためにって話じゃなかった?」

「そ、そのはずなんですけど、彼、クリアしちゃったんですよね……」

「蒼の使徒を正規の手段で降した彼は"蒼神の使徒"にも"覚醒"しました。その、どうします?」

「どうするとは?」

「どうするも何もバグ絡みだとはいえこちらの不手際だが、バグで手に入れた神器やスキルはさっさと没収するべきだろう」


──あのさ、何が問題なの?


 この発言で会議に出席しているメンバーの視線が"Continued in Legend"の全体責任者である亘理わたりとおるに集まった。

「彼は不正をしたわけじゃないんだ。5時間以上も人間の限界に迫る、あるいは超越した反応速度で戦闘を行って勝ち得たものを無かったことにするの?」

「ですが、実際にゲームバランスが……」

「なら言い方を変えよう。かつてゲームに勝てなくなると『ナーフしろ』『規制しろ』『修正しろ』と声高に叫ぶ人たちが幅を利かせていた時代があった。もちろんゲームバランスが大きく崩れていたならば修正するべきだ。しかし、必要のない修正を何度も行ったゲームを運営管理していた会社は消費者ユーザーからの信用を失った。中にはゲームではなく、企業そのものが信用を失って倒産したなんてケースもある」

「だとしても不利益を被るのが1人だけの今なら何の問題もないでしょう!」

 この宍戸の発言に溜息をついたのは亘理だけではなかった。たった1人のプレイヤーから信用を失っても問題がないという発言で、彼は会議に出席した彼以外の全員からの信用を失ったのだ。

「わかった。宍戸くん、君は懲戒解雇だ。もちろん君が保有する"Continued in Legend"の全てのアカウントも無期限で凍結あるいは削除させてもらう」

「そんな! 横暴だ!」

「横暴なものか。僕が知らないとでも思っているのかい?君が意図的に"灰"と"蒼"のマップを入れ替えたのは分かっているんだよ。彼が"灰真珠の首飾り"を手に入れたタイミングで介入していたのも分かっている。GMアカウントの私的利用は立派な犯罪だ」

 亘理は会議の参加者全員に宍戸の不正アクセス履歴と改竄内容に関する記録データを送付した。

「「「!?」」」

「さて"アルテラ大森林"がインスタンスになっている件、そしてエリアボスが徘徊している件については既にゲーム内掲示板でも話題になっている。深夜の内に全てを修正、お詫びの品に関してはログイン不可となった時間分の経験値増加アイテムの配布でいいだろう。意見や質問、他の議題がある者はいるか」

「はい、私の方から1件あります」

 手を挙げたのは開発スタッフの佐藤だ。
 若手の中では非常に優秀なので亘理も名前を知っていた。

「開発の佐藤くん、何かな」

「実は宍戸さんが"アルテラ大森林"のデータを書き換えた際に一部の生態系が変化したようでして……その、ソプラ山のワイバーンが食糧不足が原因で麓の村や街を襲い始めました……このままでは明後日にはソプラの街が滅んでしまうかもしれません……」

「それは……修正できるかな?」

「ゲーム内全体の時間を巻き戻せば不可能ではありませんが、既にサービスを開始している状況で修正を行うのは先ほど代表が仰られた信用に関する問題に発展しかねません


「仕方ない、プレイヤーに解決して貰おうか。アルテラ大森林をオープンフィールドに変更、エリアボスはデータ基盤をエリアボスからエリアネームドに変更して徘徊させよう。そうすればソプラ方面へプレイヤーを誘導できるはずだ」

 変更内容の多さと煩雑さ、そして時間の少なさを想像した一部のスタッフから悲鳴が聞こえた。

(あとでリンゴジュースでも差し入れしよう)

 そう思いながら開発スタッフの増員について思いを巡らせている亘理融の顔は、マヨイが出会った果物屋のおじさんにどことなく似ていた。



───────────────
ここまで読んでいただきありがとうございます。
本章ではマヨイのプレイヤースキルの異常性とキャラクターの特殊な成長(覚醒やスキルの獲得など)をメインに書きましたが、どうでしたでしょうか。

ご指摘などございましたらお気軽に感想をお寄せください。
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