VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

閑話-1 夏間藍香は相談される。

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⚫︎夏間藍香

「クラスに馴染めていない?」

 高校に入学してから3ヶ月が経った夏休みの直前、私は幼馴染の真崎まさきショウから相談を持ち掛けられた。

「うん、避けられてる気がするんだよね」

 5月半ばからクラスの男子から避けられているという内容の相談だけど私はその原因を知っている。
 もっとも真宵まよい──真崎宵を略した愛称──は原因が自分にあることに気がついていない。たぶん、自分がクラスメイトとの交流を怠ったからだとか思ってるはずだ。

「真宵は自分からじゃ女子に話しかけられないヘタレだもんね。これを機に少しはコミュ力磨いたら?」

「簡単にできたら相談しないよ……」

 真宵は現実では自分から異性に話し掛けることは滅多にしない。例外があるとしたら真宵の家族と私くらいだ。
 もっとも、真宵は同い年とは思えないほど保護欲を掻き立てる容姿をしているので、中学時代には真宵を遠巻きに見守っていたグループもあった。

「どうすればいいかなぁ……」

 本気で悩んでいる真宵には申し訳ない気持ちもあるけれど、私は真宵をゲームの世界に還す機会が訪れたのだと内心で歓喜している。

「1番簡単なのは共通の話題を作ることね」

「共通の話題……?」

「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」

 "Continued in Legend"は来週末からサービスが開始されるVRMMOのタイトルだ。まだサービスが始まっていないけれど、前評判が十分に高いだけでなく既に賞金付きの大会を開催するという予告を出している。

「まだ発売されてもないゲームがクラスメイトとの共通の話題になるの?」

「既に話題になってるわよ」

 賞金付きの大会が開催されるということはプロゲーマーも少なからずやってくる。私の知っている範囲でも、若手中心で勢いのあるプロゲーマーを数多く擁する"KING'S"や不祥事による低迷から復活した"流星群"など私たちと少なからず因縁のあるプロゲーマーたちが既に参加を表明している。

「VRMMOかぁ……」

「いいじゃない、また一緒にゲームしましょうよ」

 もしパパたちが許してくれるなら配信も再開したい。
 私はゲームが好きなのではなく、真宵とゲームをするのが好きなのだ。私のせいで真宵がゲームから遠ざかって2年以上、自身の軽率な行動を後悔しなかった日はない。

「分かったよ。帰りにお店に寄るね」

 私の家は小さなゲームショップを経営している。
 店の名前の由来は麻雀用語で「和了あがれる時に和了れ」という意味らしいが、何故その名前を選んだかまでは知らない。プロの雀士として活躍しているママではなく、下手の横好きを体現したように麻雀が弱いパパが付けたらしいのでロクな理由ではないだろう。

 足早に教室から出ようとする真宵の背に向かって私は

「おかえりなさい」

 と呟いた。これは真宵がゲームの世界に戻るのなら言おうと決めていた言葉。誰にも最初を譲りたくないという自己満足だ。

「なんか言った?」

「いいえ、なんでもないわよ」

 聞き取れていなくても構わない。
 私が最初に言ったという事実が欲しかっただけなのだから。


…………………………………


……………………………


…………………


「今日の夕方過ぎに宵君が来たよ。やはり俺と顔を合わせるのは気まずかったようだが"Continued in Legend"を予約していったよ」

 その日の夕飯時、パパから真宵が"Continued in Legend"を店で予約したことを聞かされた。

「うん、私が誘ったの。もう高校生になったし別にいいでしょ?」

 アイ&ショウという名前の動画配信者として活動していた私たちが引退を余儀なくされたのは、私が暴走して軽率な行動にはしったからだ。
 ことが互いの両親に露見した時、協議の末に言いつけられたのは高校学卒業までの私の活動自粛だけだった。真宵は単独で動画配信者として活動することも、中学生プロゲーマーとして活動することだって出来た。


 ──藍香と配信できないなら僕も引退する。


 それは真宵にゲームをして欲しかったパパや真宵の両親にとって一種の脅迫だった。この一言が切掛で再び私たちの両親は協議して、私が中学卒業までアイ&ショウとしての動画配信活動の自粛ということになった。
 真宵の両親は若気の至りということで注意だけにしてもいいと言ってくださったそうだけど、それに関してはママが猛反発したらしい。

「また動画配信も再開するのか?」

「私は真宵と遊びたいだけよ。配信に関してはどうなるかしらね」

 動画配信を自粛するように言われただけで、ゲームで遊ぶことに制限を掛けられることはなかった。これは私たちにゲームの世界からは離れて欲しくなかった互いの両親が意図的に作った抜け道だ。
 しかし、それからというもの私たちは暇つぶしや息抜き以外ではゲームをしていない。特にMMOのような不特定多数と接するようなジャンルは意図的に避けていた。

 私たちは両親の胸中を理解していながら、それを無視したのだ。私は自省と若干の反抗心から、真宵はおそらく競い合う相手のいない環境を想像してモチベーションが上がらなかったからだろう。

「そうか、何にせよ彼の名前は間違いなくゲーム史に刻まれるだろう。能動的な思考速度の加速ができるゲーマーは過去にもいたと言われているけれど、それと同時に並列思考が可能だなんて聞いたことがない」

 私は真宵の才能の一片を見て全てを理解したつもりになっているパパの語りが大嫌いだ。そもそも精度こそ違えど思考加速と並列思考の併用までなら

「それに宵君は────」

「ごちそうさまっ」

 まだ真宵の才能について語り足りないらしいパパが話を続けようとするのをさえぎるように私は夕飯の席を立った。
 少し乱暴な態度だっかかもしれない。

「藍っ!」

 パパの真宵自慢は聞いていて無性にイライラするのだ。
 私はママの声を無視して少し乱暴気味に食器を洗い自室に戻った。


───────────────
清純なヒロインを期待してくれていた読者の方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。夏間藍香はヤンデレ風味の腹黒系ヒロインです。夏間藍香の暴走もとい暴挙に関しましては若さ故の過ちというやつなので書くことはないと思います。
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