穢れた世界に銃弾を~日常の無い復讐者たちの日常~

矢壱

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魔法少女

帰宅

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 屋上から校舎に戻り、校庭に出る。

「おかえりぃ」

 聡里が手を振る。その傍らには目覚めた亜紀が立っていた。

「亜紀ちゃん、大丈夫?」

 未菜が駆け寄って無事を確かめる。

「うん。それよりもチャッピーは?」

「……すまなかった。って」

 それで全てが伝わった。

 何も考えないようにしていた美琴も、状況を信じられず戸惑っていた亜紀も、奇跡的に逃げられた事を祈っていた舞花にも、しっかりと伝わったのだった。

 4人は泣き、互いの手を握り合った。

 ひとしきり泣いた後、彼女たちは竜聖たちのワゴンに乗った。深夜に子供を置いては帰れないと、全員を自宅まで送り届ける事にしたのだ。

 後部座席は、人が快適に乗ることよりも、機材を置く事に重点を置いているために、9人の人間が座るシートが無かった。

「済まないが我慢してくれ」

 助手席の竜聖が後部座席に話し掛ける。

 機材と武器が大半を占める後部座席には、3人掛けのシートが1つだけ。いつもなら咲たち3人が座るのだが、今は舞花たち4人が座っている。そしてシートと機材の隙間を縫うように、車体に直接腰を下ろす形で咲、聡里、つばきが収まっていた。

「クソッ、クソッ」

 窮屈な体制に不満を持つ咲が助手席のシートを蹴る。

「兎徒野の身体でそこには収まらないし、僕は足が折れてる。仕方ないだろう?」

「クソッッ」

 最後に一撃を加えると諦めたのか大人しくなった。

 全員が小学校付近に住んでいる事で、5分もしないうちに小林亜紀の自宅に着いた。

「後で連絡するから」

 舞花がそう言うと、

「うん」

 と小さく返事をして車を見送った。

 次に神崎美琴と別れ、泉未菜も降ろした。

 最後に向かうのは瀬戸舞花の家だ。彼女は俯きながら何かを考えている様だった。

「着いたぞ」

 竜聖の声で、舞花が顔を上げると目の前には自宅があった。

 聡里がバックドアを開けてやり、降りる事を促す。

 舞花は重い足取りで車外に出た。

「あの、」

 舞花は、車内に居る全員に聞こえるように言葉を紡ぐ。

「私に銃の使い方を教えてくれませんか? まだ戦えないですけど、いずれ。どうしても逃げるのは嫌なんです。もう逃げる事しかできないのは」

 溢れ出す涙。今まで張り詰めていた感情が解放されたのか、そこには年相応の少女がいた。

 その少女に言葉を投げかけたのは咲だった。

「小学生に扱える銃なんて無ぇよ。どうしてもッつーなら8年待ちな。8年経って、まだ戦いたくて、私等が全員死んでたら銃を取ってお前が戦え」

 それだけ言うと、聡里にバックドアを閉めさせる。

 バタンとドアは閉まり、車はゆっくりと動き出す。その後ろ姿を見届けて、舞花は自分の家に戻ったのだった。
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