135 / 842
女子に協力
5
ガラリとドアが開かれた。
「…ぁ…っ、」
目が、合う。
(……見つかって、しまった)
蒼くんは一瞬驚いたような表情で、硬直した。
おれもこんな状況で明るい挨拶なんかできなくて、地面にへたり込んでいた。
「ぁ…、あの…っ、」
喉の奥から声を絞り出す。
謝らないといけない。とりあえず、こんな場面を勝手に見ちゃったんだから、謝らないと。
そんな強迫観念に動かされて、震える唇を動かした。
「ご、ごめ、」
そう言葉にしようとすると、蒼くんがさっきの冷めた表情とは全く異なった表情を浮かべる。
ふわりと、いつものように優しく微笑んだ。
その笑顔が綺麗で、それが怖さを一層増幅させる。
「まーくん、探しに来てくれたんだ?」
そのいつもの表情で、あまりにもいつも通りに、嬉しそうに笑って。
何事もなかったかのようにおれの頬に触れようとするから、反射的に身体がびくりと跳ねる。
「…ひ…っ、」
「…――っ、」
おれの反応に、蒼くんは眉をピクリと動かした。
その瞳が悲しげに翳るのを見て、「ぁ…っ、ごめ、ん…、」と自分の反応を悔いた。
どうしよう。傷つけてしまった。
彼は伸ばしかけた手をとめて、ぎゅっと握った。
「なんで、そんな顔するの?」
僅かに震える声。
顔を曇らせて、まるで捨てられた子どもみたいな表情を浮かべる。
わからない。今、自分に向けられている感情の意味を理解できない。
そんな思いが蒼くんから痛いほどに伝わってくる。
動揺と戸惑いでぐちゃぐちゃなおれの視線が紫苑に向くのを見て、蒼くんが「…ああ、そういうことか」と一瞬だけ自嘲気味な笑みを浮かべた。
次の瞬間、見てるこっちの胸が締め付けられるような悲痛な顔をして、彼は歪んだ笑顔を作った。
薄く整った唇で、嗤う。
「今見た通りだよ」
「…っ、」
「わかった?まーくんに言い寄ってきた女は、あんなところで発情してる下劣な女だったんだってこと」
その”女”が、何を示しているのかはすぐに分かった。
紫苑のことを、蒼くんは言ってるんだろう。
でも、その言葉にうんなんて頷けるわけがない。
「…っ、…ッ、…なんであんたが、いつも…!!」
恨みの籠った声。
教室の中を見ると、紫苑がこっちを向いていて。
「…真冬が、いるせいで、…っ、あんたなんかがいなければ私が…っ、」
その表情がまるで。
こんなことになってるのはお前のせいだと。
お前が悪いのだと。
そう訴えるようにおれを睨み付けていて、それが怖くて手で床を押して後ずさった。
「…――ッ、ぁ…っ、ぁあ…っ」
その表情が、”誰か”と重なって、どくんと心臓が震える。
胸が苦しい。
汗が、出る。
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…