手足を鎖で縛られる

和泉奏

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過去【少年と彼】

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そんなことを思案している間にも真冬は攻撃の手を緩めない。


「あーん」

「……っだから、なんでこんな…」

「えへん!おれとくーくんのしんこんさんごっこなのだ!」

「…絶対また意味わかってない…」

「…?」


期待に満ちたキラキラした顔で繰り返される言葉。

もう流石にため息もでない。
相変わらず俺に対して手取り足取りなんでもしようとする真冬がほら食べろと言わんばかりに団子を唇につんつん当ててくる。
頑として口をカタく閉じる俺に、むぅとその眉が寄せられた。


「…や?」

「…いや、別にやだとかそういうのじゃなくて、」

「……たべて、ください。」


舌足らずな言葉で何故か敬語でそう言われる。
ぺこんと頭を下げられた。
口を開くのを躊躇っていると、しゅんと落ち込んだ様子でまた泣きそうな顔をする。

…ああもうまたか。
なんですぐそうやって泣きそうになるんだ。


「そんなに、その、あーんしたいの?」

「……」


俺の言葉に黙って小さくこくん、と頷く真冬。


(……)


黙っていると段々その瞳に涙の膜が張ってきているのが見える。


「…う、や、やっぱりやめ…」

「…っ、食べるから」


ああもう完全に掌で踊らされてる気分だ。

その様子がまるで小さい犬がしょぼくれているような感じに見えて
やめようとして腕を引こうとした真冬の箸を持っている方の手首を掴んで、ぐいと引き寄せる。
仕方ない、と硬く閉じていた唇を緩めて団子を口の中に含んだ。




「…っ!」

「…」


もぐもぐと咀嚼する俺を見てぱああああとこれ以上ないほどその顔が元気になる。
…よくそんなにコロコロ表情変えられるなと感心する。



「つぎは?くーくんつぎはなにたべる?」

「…そのみどりのやつ」

「あーん」

「……ん、」


ほうれん草、とかその名称を言っても真冬にわかる気がしなくて、とりあえず簡単な言葉で言うと次々と「あーん」されるモノたち。
餌付けされてるみたいでなんか不服だ。
真冬は俺が食べる度にすごく嬉しそうな表情をする。

何がそんなに楽しいのか俺にはわからない。
でもそういう真冬の顔を見るのは嫌いじゃなくて、むしろいい気分になるから心地よかった。

今まで自分が感情をおさえる癖がついているだけにそういう大きい感情を示す真冬の表情が眩しい。
楽しそうにニコニコしてその”しんこんごっこ”とやらをする本人が首を傾げながら問いかけてくる。



「おいしい?」

「…うん」



正直言えば、味なんてわからない。
ずっと前、気づいた時から食べ物に味なんてついてなかった。
まるでスポンジを食べているようなそんな感じで、皆が言うおいしいが理解できなかった。
今のほうれん草の味だって、紙みたいな感触のものを噛んだら水みたいな液体が出てきたって感じでいまいちよくわからない。
…おいしいってどんな感覚なんだろうと気になった時もあったけど、よく考えたら最初から知らない俺にそんなものを求める理由もなかった。

食事なんて味がわからなくても困らない。
身体に必要な栄養さえとれれば後はどうでもいい。
だから、知らないなら知らないままでも別に構わないと思った。


「…あ、くーくん。おくちのちょっとよこにケチャップついてる」

「…え、…っ」

「よし、とれたよー!」

「…(…なんでそんな普通なの)」



教えてくれたのはありがたい。

でも、
指で拭うとか布でとるとかではなく、

突然顔を近づけてきたと思えば、少しだけ軽く瞼を閉じた顔がすぐ目の前で。
ぺろりと出した舌で舐めとられた。

動揺する間もなく、離れていった真冬が何事もなかったかのように、舐める過程で汁がついたのか今度は自分の唇を舐めたのを見て、唖然として…はぁと大きく息を吐いた。



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