貴方は俺を愛せない

和泉奏

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ご主人様と執事とは

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明らかにその通りですと示すかのように、勝手に上昇する心拍数と頬を中心に全身から発生する熱。


「…っ、ち、ちちがうぞ!?いや今多分何故か顔が赤いと思うが、身体がオレの許しを得ずに一方的に体温を上げ始めただけで全然今の言葉が図星だったとかそういうのじゃないからな!」


何も違わないだろ、と脳内で自分にツッコむ。
ぶんぶんと振る腕と首の速度が異常だ。
あんまりにも強く否定しすぎてどこかに吹っ飛んでいきそうだった。

(…絶対にばれてる)

こんなのばれないはずがない。

…そう、思ったのに。

しかし、こんな動揺しまくってるオレをきょとんとした表情で見ていたさっくんは、不意に顔を綻ばせて頷いた。


「ええ。存じております」

「嘘なんかついてな…っ、て……え?…ほん、と…?」

「はい」

「う、うむ。そうか。わかってくれたか。物わかりの良い執事を持って主人として鼻が高いぞ」


嘘…だろ、とこっちがびっくりするようなまさかの反応。

念のために顔を窺っても、訝しんでいる様子なんて全くなかった。
にこにこと快い笑顔を浮かべているさっくんを見て、…良かった。とほっと安堵に息を吐く。

どうやら納得してくれたらしい。
良し。ご飯を再開しよう、とした



…その時



「では、何故赤くなられたのでしょう」

「っ、?!!」



安心して緩みかけた全身に一気に緊張が走った。
………そこ突っ込んでくるか普通。


「…もし先程仰られた事柄が要因でないとしたら、心配ですね…」


本当に疑問に思っているかのように嗚呼どうしましょう、と悩ましげな表情をするさっくんに、「あ、あの…?」とつい他人行儀な言葉を投げかけてしまう。

(…な、何故って、そんなの…決まってるだろ)

要因じゃないわけないだろ。
心配っておかしいだろ。

とは思っても、図星ではないと言ってしまったがために自分から「実はああなってしまった理由はな…」と白旗を上げて説明し出すことなんてできない。

顔を上げたさっくんに真剣な瞳で問われる。


「夏空様、頬が赤くなってしまわれた理由について何か思い当たる点は御座いますか?」

「…っ、は?いや、な、な、ないな。本当にわからん。うん、何故だろうな」


腕組みをして、うーむ。これは難問だ。と考えるふりをしてみた。

だけど一方、内心ではなんでこんなわかりきった原因を探すふりなどしなければならないんだ。と眉を寄せてもいた。

…言わずもがな、自分のせいである。

とはわかっているけど、いや、だからこそもうこれ以上つっこんでくるな。と言いたい。


『別にいいだろう原因なんて。赤いもんは赤いんだ。トマトだって理由はわからないけど赤いだろう』


と、よくわからない理論でうやむやにする気満々に、上記の言葉を発しようと、さっくんの方を振り向く。



…と、


「…申し訳ありません」

「ん?」

「念のため、お熱を測らせていただいてもよろしいでしょうか」


心配そうな、…そんな声が聞こえて


「え、…いいけど…」


条件反射で、流されるように許可を出した。


「失礼致します」

「…へ、」


すっと伸ばされた手に、前髪をあげられる。
その上品で優美な香りが、室内を穏やかに漂う風とともに額をふわりと撫でていった。


…それから

少しだけ暗くなる視界と、近づけられる端整な顔に

息を、呑む。



「―――っ、」


(……なんと)

オレと同じように、前髪を自分で上げたさっくんが

…こつん、と額をくっつけてきた。


「…な、な、な…っ、」


(そんな測り方があるか!!)

普通体温計で測るだろ。
おでこをくっつけるとか、さっくんこそオレを幾つだと思ってるんだ!


「…ッ、…っ、」


だけど言おうとした言葉は、あわあわと震える唇から一向に外には出ていかない。

額をくっつけあったまま、少しの静寂。

……お互いの吐息だけを感じるような、この距離感に

一瞬呼吸が止まった。

周りの音も耳から消えた。
ドクドクと…再び血液が首から上に凝集してくるのを嫌でも感じながら、目の前の顔を見つめる。


「おかしいですね。熱はないようですが、今度は呼吸まで荒く…」

「っ、」


心配そうな口調とは裏腹に、ふ、と意地悪げに微笑む顔。
……わ、わかってるくせに。


「ううううるさい…っ、…別に赤くなんかない…!!」


ぐぬおおと怒って、ぱっと額を離す。
ばばっと部屋の隅まで距離を取った。

そっぽを向く。

(熱い、熱い、熱すぎる…!!)

頬を手でおさえてその暑さを振り払うようにふるふる顔を振った。
今すぐ冷水に顔を突っ込みたい。


「鏡でご覧になりますか?」

「いらん!!」


本当に鏡を持ってきそうな気配に、振り向いてキッと睨み付けるようにしてがるると牙を剥く。

…確実にオレの精神を破壊しに来てるぞこの執事。



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