貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
34 / 369
自慰行為とやらしい行為のその後

6






「…っ、―…」


ここは夢の中なのか、と思わず目を疑った。


だって、
さっきまで、確かにごく普通の…息なんてしてるはずのないただの紙だったはずなのに。


『…にゃあ…?』


さっくんにだっこされたまま、じいいいっと熱でも出すんじゃないかってくらいに見つめていると…猫が首を傾げるような仕草を見せた。


その鳴き声で、やっと我に返る。


「…っ、わ、にゃんこ、すご、さっくんすごい…!」


多分、今までの人生で初めてってくらい…目をキラキラと輝かせ、感動していた。
目の前で起こっている奇跡に、むねがいっぱいになる。

おろして!とぽんぽんさっくんの肩を叩くと、「はい」とクスクス面白可笑しそうに声が笑う。
胴に回った腕にぎゅっとされ、そのままトン、と宙に浮いていた足が地面につく。

わー!と喜んで触ろうとして、…こっちを見ている猫と間近でぱちり。目が合った。


「わぎゃ!」


驚き、びくつき、…一気に走って戻り、さっくんの後ろにこそこそと隠れる。
そのスーツの裾を掴んで、見上げた。


「……触っても、噛まない?」


この前は、確か触ろうとしたら危ないから駄目だと言われた。
それに、猫が人を爪で引っかいているところもじっさいに見たことあるし、…今更怖気づいて、ぶるぶると震える。


「大丈夫ですよ」

「…ほんとか?」

「はい。この猫に限っては絶対に危ないことは致しませんので、どうかご安心ください」


「もし怖いなら、俺が先に触りましょうか?」と屈んでオレと目線を一緒にして頭を撫でてくれるさっくんに、こくんと頷く。


「おいで」

「…(…わ、)」


片膝を畳につけているその後ろにぴったりとへばりついて、さっくんの声に従ってテコテコこっちに歩いてくる猫を見る。


(…本当に、来た…)


おお、と素直に感動し、ぱちぱちと手を叩いた。

…と、躊躇いなくさっくんが猫の方に手を伸ばし、


「さ、さっく…」


噛まれたら、オレが主人なんだからさっくんを守らねば。となんとなく掴んでいたスーツの裾をぎゅ、って引く。

けど、


「…ぁ…」

「ほら、怖くないでしょう?」


手が、よしよしと何の抵抗もされずにその毛並みを撫でていた。
頭を撫でられれば、猫はくすぐったそうに目を細めて小さく鳴く。



「…可愛い…」

「ふふ、そうですね」

「…オレ…っ、オレも、触りたい…!」


授業でせんせいに発言するときみたいに手を挙げ、…少し身体をずらしたさっくんの横に、両膝をついた。

目はもう既にその猫にくぎ付けだった。

警戒心の強そうな顔をした猫が、近づいてきたオレを今度はなんだ何の用だ何事だというような顔で見上げてくる。


(…さ、触りたい…っ!)


もふもふしたい!
そんな邪念をかかえつつ、でも、未だに緊張しすぎて手を中途半端に浮かせただけになる。


「夏空様、」

「ぎゃ!」


ビクッ

感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。