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学校とさっくんと桃井
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ここにいる私に気づく様子なんかさらさらない。
それどころか、俯いて何も言わない音海君に躊躇いがちに手を伸ばして、
「……ぁ、」
…そっと、優しく気遣うようにその頬に触れた。
「…っ、…さっく、」
「……」
そして、頬から耳にかけて愛撫するように撫で、びくりとして顔をあげた音海君を酷く愛おしそうに見つめて、…ふ、と持て余したような笑みを零す。
…――そんな、まるで恋人同士みたいな雰囲気 に、
「…は…?何、で」
思わず声が、漏れた。
…2人だけの世界。
そうとしか言えない腹立たしいものを見せつけられて、ピシ、と身体が冷え切る。
とんでもなく、怖いほどに膨れ上がる嫉妬心。怒り。屈辱。
馬鹿にしてるのか、と憤慨した。
喧嘩したとか言っておきながら、結局こういうことだったってこと?
私を待たせて二人きりで会ったと思ったら何これ?こんな場面を見せつけて、咲人は自分のだとでも言いたいの?
(…ふざけないでよ。”ソレ”は、…っ、私のものなのに…!!)
怒りに唇を震わせ、感情のまま乱暴に目の前の扉を開いた。
「ねぇ、音海君、もういいかな?」
できるだけいつものように笑顔を作ってみたけど、うまく笑えてる自信がない。
けど、声に反応してこっちを向いた音海くんのとは別の、もう一つの視線に、頭の芯が痺れるほどの快感を得た。
ついさっき音海くんに向けられていたものよりも冷淡なものでも、構わない。
…彼の瞳に映っている。
ただそれだけのことなのに、心が、子宮が狂おしいほどに跳ねる。
「ぁ、そうだ。さっくんに聞きたいことがあるんだ。…桃井が…その、…執事になってほしいらしくて、」
「……執、事…?…俺に、ですか…?」
「…うん。あ、っていっても、今日だけなんだけど、」
明らかに、さっきとは違う。
ずっと彼のことを見ていた私だからわかる。
…瞬間、
その整った顔に、暗鬱な陰影が掠めたのを見逃さなかった。
「…どう、する?」
でも、それはほんの一瞬だけで、
音海くんが問いかけの為に見上げた時には、すぐに感情の読めない艶やかな微笑みへと変わっている。
「――夏空様が、そう望むのでしたら」
「…っ、」
落とされた静かな声音に、トクン、と鼓動が鳴った。
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