104 / 369
学校とさっくんと桃井
4
「今は、オレがどうとか、そういう話をしてるんじゃ、」
むっと眉を怒らせながら、吐き捨てて、振り返ろうと頭を動かす。
いやだけど。
本当にこの泣きそうな顔を見られるのはいやだけど。
…元主人たるもの、怖気づいてると思われてたまるか。
たとえ振り返ったとしても、どうやっても見上げる角度になるのも癪だが。
…とうんぬんかんぬん考えながら顔を後ろに向けて、
「…っ゛、!」
(うわ、)
危うく声を上げるところだった。
ちょっと上、キスでもするのかってくらい、
オレに壁ドンするためにちょうど良い感じに腰を屈めていたさっくんの顔が、すぐ至近距離にあって、
「…っ、」
「……」
避けるのも負けたみたいで嫌だから、まっすぐに、その顔を睨み上げることにした。
色んな意味で泣くのをぐっとこらえる。
「……っ、…っ、」
「……………」
(…う、う)
お互いに無言のまま逸らされない視線に、最早泣き出したい。
にらめっこした時に毎度オレが勝ててたのは、さっくんが勝ちを譲ってくれてたからなんだって初めてわかった。
「……っ、…っ、…ッ、」
この居たたまれない空気に、引っ込めたはずの涙がまた目に水の膜を張る。
ガクガクと膝小僧が震える。
そんなオレをただただ何の感情もなく、まだオレの後ろ…ドアに手をつけたまま見下ろしてくるさっくんに、ちびりそうになってきた。
「…っ、……っ、~~~っ、」
ぶわわわと言い訳のしようもないぐらい、涙でいっぱいになったそこから零れ落ちるのも時間の問題だった。
…いつものことながら、こうして間近で彼を見ると考えなくて良いことまで考えてしまう。
普段はふわりと柔らかく微笑んでくれるから、そこまで気にならない。
けど、今こうして笑顔が消えているその整いすぎた顔立ちや身体つきは、神様によって一生懸命精巧に作られた、良く出来た人形みたいだった。
…ただでさえ無表情になると怖いのに、
それに加えて、今はスッと冷たく細められた目が鋭くて、身が竦んでしまいそうになる。
「…今、夏空様が考えてること、当ててみましょうか」
「………え?」
ガクガクブルブルと明らかにわかる震えに耐えながら睨み返していると、…数分後、やっとのことで相手が口を開いた。
…と、思ったら、指先で唇に触れてくる。
どこか影のある、でも艶やかな表情で、オレの唾液で濡れたその指を塗り付けるように唇の端から端までなぞってきた。
「”この歳になって、泣いて漏らしそうになるなんて恥ずかしすぎる。オレ、高校生なのに”」
「…っ、!な、」
今考えてたことをそのまま一言違わずにいいあてられて、思わず目を丸くする。
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。