143 / 356
涼とお家で隠しごと
20
しおりを挟むオレの首もとに顔を埋めるようにしてくるから、濡れた黒髪からその首筋に雫が落ち、更に密着しているオレにも同じ場所に一緒に雫が伝っている。
抱き締められてるこっちまで寒さと冷たさで心臓がうぎゃぁってなりかけそうになった。
「…っ、」
「ぇ、あ、…さっくん…?」
……泣いてる。
ずっと、ただひたすらに声をおさえながら、震えながら縋るようにオレを抱き竦めて涙を流している。
最初を思い出せないほど長い間一緒にいたはずなのに、こんなのは初めてだ。
いつも余裕綽々で、優雅に微笑んでて、何でもさらっと躱してしまう。
そういうさっくんしか、見たことなかったのに。
「…むふ、ふ、もー、なんだよ。あれ、あれだ。そういえば、桃井はどうしたんだよ。この浮気魔め」
だから、これほどまでに取り乱して、動揺を露わにするさっくんに、こっちもびっくりしすぎて思わず茶化す言葉が口を出てきた。
ただでさえ雨でびちゃびちゃなさっくんの身体が、抱きしめられているオレの身体、服を一気に濡らす。
加えて、涙が更にそこに染みこみ、重みを増している気がした。
堰を切ったように泣き続けて…まさに号泣、という言葉が相応しい泣き方だ。
「なんで、そんなに…あ、!オレがさっくんを売った云々のことで泣いてるのか」
それしかここまでさっくんが泣く理由が思い当たらない。
「けど、そもそも売ってないし、べ、べべべ別にオレはどっちでも構わんが、さっくんがどーしてもオレのもとに戻ってきたいっていうなら、」
やはり正直に戻ってきてくれたら嬉しいとはさっき同じような意味の言葉を言えたくせに、今更照れすぎて言えなくなってしまった。
べべべ、別に、ってなんだよ。どもりすぎだろ、オレのヘタレ。
「今すぐに力ずくで奪い返してやらんことも…」
「っ、…っ、」
「ない、が、………」
気のせいじゃ、ない。
どれだけ言葉を費やしても、何かがすれ違っている。…さっきも感じたことを、また思い知らされた。
12
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる