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甘くて、痛くて、泣きたい
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…寝てるからばれてないと思ってて、油断していた。
思い出してみれば、かなり子ども染みた行動をしていた自分の行いが恥ずかしくなる。
「…お、起きてるなら起きてるって言ってくれ」
変などもりかたをしながらぶっきらぼうに呟いた。
(しかも起き抜けにめっちゃ濃いキスだった…)
軽いちゅーで終わるつもりだったのに。
…まだ唇と舌の感覚が鮮明に残ってる。
荒く肩を上下させながら、もぞもぞ羞恥に頬を熱くして身体を離そうとした。
けど、当然の如くぎゅうってしてくる腕にそれは許されるはずもない。
「ふふ、ほっぺたが赤いですね」
「っ、…気のせいだ」
クス、と蕩けるような甘い笑いを滲ませて囁かれた言葉に、む、と眉を寄せながら見上げる。
……夜に泣いてた時とは、違う。
弱々しく甘えてくる感じも、冷たい雰囲気もない。
普段通り薄い唇で優しく微笑み、オレの頭を撫でていた。
…いつも通りに、戻ってる。
「……ガキみたいだって思ってたんだろ。」
「…んー、…いいえ…?」
ふてくされながら吐き捨てれば、悩んだ後、疑問形の否定が返ってくる。
…む、と余計にいじけて、釈然としない気持ちのまま首をひねる。
なんで疑問形なんだよ。しかもできれば悩むな。
……しかも、違うというわりに、なんだか含みをもたせた言い方な気がする。
少しのうたがいの意味で見上げれば、その唇が綺麗な弧を描いて、
「俺が寝てると思って抱きついてきたり、慣れないのに一生懸命キスしようとする貴方がどうしようもないほど可愛いなって」
「っ、」
さらっと慣れたような仕草で口説き文句を吐かれる。
びく、と身を引き、条件反射で頬が熱を持てば、さっくんがまたそれにくすぐったそうに目を細めて笑った。
それにしても
(…可愛い、『可愛い』、ね…)
「ふーん、へーえ、ほーう」
「……?」
意識せず、不満な声になって気持ちが零れる。
「…オレは可愛くない。全然可愛くなんかない」
もっと冗談っぽく言うつもりだったのに、思ったより拗ねてる感じになってしまった。
「だって、さっくんの大事な、すごーくすごーーおーく、だいじな桃井の可愛さには全然敵わないもんな」
べつに可愛いって言われたい訳じゃない。
むしろかっこいいって言われる方が嬉しい。
…でも、さっくんの一番は全部オレじゃないと嫌だ。…胸がざわざわ変な感じがする。
文句を投げつけてる相手ではなく、かけ布団の方を向いて、不機嫌オーラを出す。
絶対面倒くさい、嫌味っぽいって思われてるだろう自分の言い方に若干自己嫌悪に駆られながら、ふん、と布団の内側を意味もなくにらんだ。
「オレにはいっぱい意地悪してくるくせに、桃井にはお姫様扱いっていうか、滅茶苦茶優しくしてただろ。…それに、…名前で…呼ばせてるし、」
ぶつぶついじける。
オレがさくとって呼ぼうとしたときはかなり嫌がってたのに。これでもかってほど拒否されたのに。
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