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甘くて、痛くて、泣きたい
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しおりを挟む言わなければ良いのに、滑り落ちてしまう。
「――さっくんは、…本当は桃井のことが、」
『好きなんだろ』
続けようとした音は出せなかった。
…ぽつりぽつりと湧いてきた言葉を考えもせずに詰るように笑いながら言葉に出し続けて、喉に魚の骨が引っ掛かったような感覚に陥って、やっと途切れる。
そして、すぐに後悔に苛まれた。
これで、彼が肯定したら、と既に音にしてしまった言葉によって、怖いくらいのが恐怖が身を襲う。
昨日だって、さっくんは桃井を好きじゃないとは言わなかった。
…オレは、涼よりさっくんの方が大事だって伝えたのに。
布団に顔をつけて、隠す。
さっくんは、オレが売ったって言ってた。
まるでオレにとって自分が”モノ”でしかないっていうような言い方をした。
家族なのに…いつも、自分は物だと言う。オレの道具だと言う。
捨てないで、と彼を作った主人であるように、オレに乞う。
モノなんかじゃ、ないのに。
ちゃんと、ひとりの人間なのに。
それに比べて、桃井といる時のさっくんは、楽に生きてられてるように見えた。
『香織』『咲人』って、お互いを名前で呼びあって、
桃井のことをわざとらしく異様に崇拝してる素振りで褒めちぎるわけでもなくて、
…うまく言葉にできないけど、オレといる時ほど不自然な感じは…しなかった。
そもそも、だ。
さっくんはモテるんだし、本当は恋人がいてもおかしくない年齢だ。
今回の出来事がきっかけで、たとえオレより桃井といることを望んだとしても、自然な感情の流れなんだろう。
その感情が芽生えてしまったから、余計に怖くなったんじゃないだろうか。
他の女の人に主人に対するもの以上の感情が芽生えたことで戸惑い、家族であるオレに捨てられるかもしれない、と。
"夏空、様…っ、"
そう考えれば、雨に濡れながらもあれだけ泣いていた理由の説明がつく。
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