183 / 369
それ以上の関係にはなれない
2
テレビをつけると、…恋人らしい二人の男女が映る。
仲睦まじげな様子に、視線を逸らし、睫毛を伏せた。
…すぐに消し、自己嫌悪と下がる気分に唇の端を噛む。
(なんでこのタイミングで、)
「夏空様、…?」
テレビを見るためにここまで運ばせたくせに数秒でやめたオレに対し、ソファーの傍で立っているさっくんが戸惑い、窺うような声音を出す。
熱い身体。
言葉を作ろうとして、喉から変な音と一緒に咳が飛び出てくる。
すう、と難しい呼吸で息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「明日から、命令追加」
大きな真っ黒いテレビ画面を睨むように見据え、その液晶に見える弱々しい自分に苛立ちが募る。さっくんの方は、見ない。
「オレ以外との不必要な会話、接触を禁止とする」
明日は学校がある。
保健室勤務とはいっても、さっくんには不特定多数の人間と対話する機会があるはずだ。
「優しくするのも、笑いかけるのも、甘やかすのもだめだ」
さっくんは男女問わず綿飴みたいに甘くて優しい。
外見だけでも惚れさせやすいのに、同年代の男じゃ考えつかないような気遣いもするから余計に女子達が燃え上がって本気になる。そういう話を何度も何度も耳が痛くなるほど聞いた。
「ちなみに、期限は無期限だからな」
言われる前にまくしたてるように投げる。
見ずに言ったのは、自分の言葉の意味を、それに対する彼の素直な反応を知りたくなかったからだ。
(…たとえ主人だとしても、ここまで執事に強制していいわけがない)
さっくんだって従わないだろう。
流石に不満に思うだろう。
オレの命令なら桃井と結婚もするって言ってた。
でも、それは仮の話だ。実際にそう命令するわけがないってわかってるから言えたとしか思えない。
けど、今オレが言ったのは、引き受ければ明日から”絶対に実行しなければならないこと”で。
もしかしたら、とか、そういう夢みたいな妄想話じゃない。
「……………」
(……ほら、やっぱり)
この部屋にある沈黙が、すべての答えだ。
「な、さっくん、」
言葉を発する前に、笑いを作る。
冗談だよ。って、そう言うために、振り返るためになんてことない表情を作る。
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。