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学校
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……
……………
廊下に出て、ある程度歩く。
もうすぐ授業が始まるせいか、特定の授業の時にしか使わないような棟の廊下は人の気配はほとんどなかった。
結構歩いたし、こっちとしても体力があまりない。
早足で進んだせいで息が切れて苦しい。
そろそろここなら話を切り出してもいいだろうと足を止める。
”何なんだあれは。一体何のつもりだ”
と、文句を言ってやろうとして、できなかった。
掴んでいた手を離し、振り向いた途端
「…っ?!ぇ゛、」
逆にこっちが手首を掴まれ、そのまま壁に押し付けられる。
何かを言うこともなく、吐いた息ごと噛みつくように唇を塞がれた。
「ん゛、ん…っ」
冷たい壁の感触が直で後頭部と背中を冷やす。
しかも結構な力で固定され、びくともしない。
目の前で瞼を閉じている整った顔に、頭がついていかなくて目を瞬く。
それでも唇に軽く舌先が触れると、いつもの癖でなんとなく唇を開いてしまい、触れ、擦れる粘膜にぶるぶると腰を震わせた。
(…誰が、いつ来るかもわからない廊下で、)
普通に考えて教師と生徒がキスしてる姿を見られたらやばいなんてもんじゃない。
オレが怒られるのはまだ良い。
(………だめ、なのに、)
…最悪、さっくんがクビになるかもしれない。
だから早く距離をとらないといけない。はなれないといけない。
だけど、そのことを気にしたのは数秒だけで、すぐに弱い思考は巧みな舌によってからめとられ、蕩けさせられ、奪われる。
強請るように余裕なく熱を分け合うような行為を繰り返し、相手の粘膜が丁寧に体温を、理性を吸い取ってくる。
「…は、…っ、夏空…様、」
「……ッ、んん…、ふぁ…っ、」
薄く開かれた目に滲む感情に、戸惑いとは別な気持ちが胸を締め付けた。
(…微かな苛立ちと、…怒り)
普段学校では見られない彼の表情を見ると、自分が特別な気がしてきて悪い気はしない。
掴まれて押さえつけられてる手首が痛くて、手に力を入れて外そうとしても、そうすれば今度は反対にキスの方から意識がそれてしまって粘膜を嬲り続けられる。
「…っ、ん……、は、ぁ、ふ…っ、」
だらしなく閉じられない唇を濡らす唾液が増え、そのぬるぬる感に腰が震え、脳が痺れる。
前だったら絶対に拒んでいただろうけど、この顔を独り占めできる時間を逃したくなかった。
結局、どうしたいんだオレはと微かに冷静な自分が訴える。
…でも、正直…好きな男にキスされて嫌なやつはいないだろう。
それに、これだけ切羽詰まったような息の奪い方をされると
…違うってわかってても、
…そうじゃないって知ってても、
求められているようで、オレを必要だと思ってくれているみたいで胸が壊れそうなほど泣きたくて嬉しくなる。
それにさっくんはキスがほんとに上手いから(キスだけじゃなくて他もやばいくらい慣れてるけど)、すぐ気持ちよくなってしまう。
キーンコーンカーンコーンと予鈴が廊下に響いたのを意識の端で捉えて、かろうじでその身体を押して離そうとした手もとられて指を絡めたまま壁に同じように押し付けられては一切の抵抗も叶わない。
構ってほしい時にしてくるキスみたいに、熱をわけあうような口づけは容易に鼓動を速くし、狂おしく腰を砕けさせた。
力を失くし、崩れ落ちそうになれば股の間に差し込まれた膝にズボンの中で勃起している硬いちんちんを擦る体勢になって余計に感じてしまう。
後ろは壁、しかもしゃがみこもうにもそうできないように膝を差し込まれては声をできるだけ我慢しながら耐えることしかできなかった。
「……っ、…は、ぁ…はぁ、ぁ…」
ゆっくり離れていった熱の感触に、軽く吐息を漏らせば、膝が抜かれ、…ずるずると床についに崩れ落ちる。
そんなオレの頬に触れ、優しくなでる低い温度の手。
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