貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
194 / 356
学校

8

しおりを挟む




***

ホームルーム中の教室はなんだかいつもより真剣な空気で、さっきのことを追求されなくて楽だった。

というよりも、それどころじゃないようだった。
オレが遅れてきたことを咎めるよりも、厳かな表情で席に座ることを指示される。

蒼白、困惑ぎみな正孝と目が合い、どうしたんだろうと不思議に思う。

静かに自分の席に腰をおろすと、担任が「あー、」と咳払いしつつマイクを調整する時のように声を出した。


「休んでいた生徒もいるため、改めて状況を説明するが、」


普段ホームルーム中でも和やかな空気を崩さない担任のやけに重い声に居心地が悪い。
皆も集中して聞いているらしく、誰一人物音を出さない。

どうせ大した話じゃないのに、何をそんなに真剣になってるんだろうと話半分にそちらに注意を向けている と


「――先程も言った通り、宮永 涼の行方がわからなくなって3日経つ」


ぴた、と身体が石になったように固まる。
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。


「……え…?」


呆けた声が唇から零れる。
今、なんて言った…?

”宮永 涼の、行方がわからなくなって”

(涼が、行方不明…?)


「何か情報があれば教えてほしい。最後に宮永を見たかもしれないと思う場所、時間、一緒にいた人物等。心あたりのあるものは後で言ってくれ」

「………」


担任の言葉が耳から入って処理できずに通り過ぎていく。

数分遅れてのろのろ、のろのろと脳が働き始める。
その後、いつもの何気ない連絡事項が伝えられていたが、背景のまま耳に入ってこない。


”ゆくえふめい”

”みっかたつ”

涼、涼が、いなくなって、三日…?

最後…、オレが、涼と会ったのって、


「……っ、ぁ、が…、な、に、これ、」


びり、と激しい雷が頭を感電させる。
身を恐怖で隅々まで汚して、潰す。

寒い。寒い。
苦しい。息が、苦しい。息ができない。


”っ、ふ、は、きもちいー?”

オレの上に乗って腰を振っていた 涼と、

おれ、オレ、は、オレ、オレは、オレが、オレは、何も、何、
、、、


「おい!夏空、!!!」

「……え、?」


大きく肩を揺さぶられ、脳がシェイクされた。

目を開けると正孝の怪訝そうな顔が見え、…ぁ…と小さく狭い気管支から息を漏らした。

…弱いけど、声が、出せる。
水分が全くない喉がパサつく。

今まさに長い眠りから目覚めたばかりのように世界が眩しくて、ぼんやりとした。


「どうした?まだ体調良くないんじゃねーの。帰るか?」

「…え、ぁ、いや、オレ、は…」


寒い。熱い。
乾燥しきった声を絞り出し、困惑する。

…今、オレなにしてた…?


「つーか、その猫早く追い出せよ。ついに学校の中にまで来やがった…」

「…ねこ…?、」


もふもふして良い匂いがすると思ったらいつの間にか膝の上に白い毛並みの美しい猫が伏せていた。


「どうして、」


家にいるはずなのに、と戸惑う。

けど、それ以上に

(…さっくんと、似てる匂い…)

凄く、安心する…。

今がどこで、何をしていたのかっていうことより、とにかく今はこの異常な感覚から逃れたかった。


「…寒、いんだ…」


別に今は真冬ってわけでもないのに。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

処理中です...