貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
200 / 369
学校

14




咲人が、私を見もしなかった。

そう自覚した途端、沸騰するような苛立ちが拳を握らせる。

今、声をかけたのは私なのに。
私なのに私なのに私なのに私なのにそいつじゃないのになんでなんでなんで。


「…(おかしい、こんなのおかしい、おかしいおかしい…)」


誰かに見られたら困るからと、音海君に部屋を移動させられた。


「これは、どういうこと?」


咲人が音海君の方にいるのもおかしい。
私の傍にいるべきでしょ。

真ん中に線を引いたとしたら、本当に自分が悪者みたいな構図になっている配置に不快感が止まない。


「何よ…っ、何なの。咲人は私のものでしょ…?ねぇ咲人、何か言ってよ」


縋るような目を向けるが、咲人が応えてくれる様子はない。

…咲人、咲人、咲人。
こんなに近くにいるのに、どうして。


「その前に、さっくんがいる前で確認したいことがある」

「何?」


咲人を庇うように身を前に出し、やけにもったいぶった話し方をする音海君に怪訝に言葉を返す。


「桃井はさっくんを傷つけてないって言ったよな?」

「当たり前でしょ」


何も咲人が傷つくような言葉なんか吐いてない。

音海君とちがって、無理やり権力で従わせてもなければ強引なこともしていない。


「これのどこを見たらそう言えるのか、言ってみろ」


音海君が指示を出すと、咲人が自身の服に手をかける。

何をしようとしているのかはわからないけど、布擦れの音を立てて白衣、ネクタイ、ワイシャツと脱いでいく咲人に、数日前に間近で見て…余すことなく触れて、好きに舐めた整った身体つきを鮮明に想起し、高揚する。

…と、

肌シャツを脱いだ瞬間、見えた傷。


「……(…え…?)」


透き通るような綺麗な肌にある、決して少なくはないケロイドの数。歪んだ瘢痕。

頭の中が衝撃と、次の瞬間怒りに染まった。


(…なんて、勿体ないことを。咲人の美しい身体になんてことを、)


あの日、ともに過ごした夜にはそんなものはなかった。

傷の形からして、怪我をした、という感じでもない。
どう見ても、人の意思による傷跡。

ということは、音海君がやったに決まっているわけで…、
体罰?お仕置き?私と咲人が一緒にいたのがそんなに気に入らなかったの?

だからってこれは酷すぎる。自分を主人だというなら、尚更頭がイかれてる。


「これでも傷つけてないって言えるか?」

「…はぁ…?」


睨むような音海君の視線に、思わず零れ出た反感。

何言ってるの。その傷と、私に何の関係があるの。

(…まさか、自分がしたことを人のせいにするつもり…?)

冗談じゃない。
こんな頭のイかれた調教をする人と一緒にしないで。


「そうやって嘘をついて引き離そうって魂胆ね。流石音海君。やり方が意地汚い」

「…まだ認めないつもりか」


音海くんの目が怒りに据わるのがわかったけれど、こっちだって引けない。
そんな酷いことをする人のところから咲人を逃がしてあげないと。


「さっくん、もういい」


私がその傷を確認したのを見た音海君がそう告げて、言われるままに服を着直す咲人に声をかける。


「咲人からも言ってあげてよ。音海くんの執事はもう嫌だって。傍にいたくないって」


どれだけそう訴えても、まだ何も返してくれない。


――それどころか、

音海君に”私にされたこと”を話すように言われると、…咲人が口を開く。




感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。