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学校
14
咲人が、私を見もしなかった。
そう自覚した途端、沸騰するような苛立ちが拳を握らせる。
今、声をかけたのは私なのに。
私なのに私なのに私なのに私なのにそいつじゃないのになんでなんでなんで。
「…(おかしい、こんなのおかしい、おかしいおかしい…)」
誰かに見られたら困るからと、音海君に部屋を移動させられた。
「これは、どういうこと?」
咲人が音海君の方にいるのもおかしい。
私の傍にいるべきでしょ。
真ん中に線を引いたとしたら、本当に自分が悪者みたいな構図になっている配置に不快感が止まない。
「何よ…っ、何なの。咲人は私のものでしょ…?ねぇ咲人、何か言ってよ」
縋るような目を向けるが、咲人が応えてくれる様子はない。
…咲人、咲人、咲人。
こんなに近くにいるのに、どうして。
「その前に、さっくんがいる前で確認したいことがある」
「何?」
咲人を庇うように身を前に出し、やけにもったいぶった話し方をする音海君に怪訝に言葉を返す。
「桃井はさっくんを傷つけてないって言ったよな?」
「当たり前でしょ」
何も咲人が傷つくような言葉なんか吐いてない。
音海君とちがって、無理やり権力で従わせてもなければ強引なこともしていない。
「これのどこを見たらそう言えるのか、言ってみろ」
音海君が指示を出すと、咲人が自身の服に手をかける。
何をしようとしているのかはわからないけど、布擦れの音を立てて白衣、ネクタイ、ワイシャツと脱いでいく咲人に、数日前に間近で見て…余すことなく触れて、好きに舐めた整った身体つきを鮮明に想起し、高揚する。
…と、
肌シャツを脱いだ瞬間、見えた傷。
「……(…え…?)」
透き通るような綺麗な肌にある、決して少なくはないケロイドの数。歪んだ瘢痕。
頭の中が衝撃と、次の瞬間怒りに染まった。
(…なんて、勿体ないことを。咲人の美しい身体になんてことを、)
あの日、ともに過ごした夜にはそんなものはなかった。
傷の形からして、怪我をした、という感じでもない。
どう見ても、人の意思による傷跡。
ということは、音海君がやったに決まっているわけで…、
体罰?お仕置き?私と咲人が一緒にいたのがそんなに気に入らなかったの?
だからってこれは酷すぎる。自分を主人だというなら、尚更頭がイかれてる。
「これでも傷つけてないって言えるか?」
「…はぁ…?」
睨むような音海君の視線に、思わず零れ出た反感。
何言ってるの。その傷と、私に何の関係があるの。
(…まさか、自分がしたことを人のせいにするつもり…?)
冗談じゃない。
こんな頭のイかれた調教をする人と一緒にしないで。
「そうやって嘘をついて引き離そうって魂胆ね。流石音海君。やり方が意地汚い」
「…まだ認めないつもりか」
音海くんの目が怒りに据わるのがわかったけれど、こっちだって引けない。
そんな酷いことをする人のところから咲人を逃がしてあげないと。
「さっくん、もういい」
私がその傷を確認したのを見た音海君がそう告げて、言われるままに服を着直す咲人に声をかける。
「咲人からも言ってあげてよ。音海くんの執事はもう嫌だって。傍にいたくないって」
どれだけそう訴えても、まだ何も返してくれない。
――それどころか、
音海君に”私にされたこと”を話すように言われると、…咲人が口を開く。
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