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彼と私の秘密(桃井side)
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いや、むしろだからこそ都合が良い。
「今この場で、もう一度私に好きって言って抱きしめて」
私の気持ちが自分にあるのか確かめようとする咲人のために、許してあげる方法を提示する。
格好良くて可愛い彼氏が不安になってしたことなんだから、甘んじて受け入れるのも私の役目だよね。
本心を言葉にするだけなんだから、簡単なことでしょ。
見上げて要求する私に、少し思案するように逸れる視線。
(ほら、やっぱり)
意図した方向に物事が進みそうな予感に、口角が上がる。
だって、そうじゃなきゃ悩む必要なんてないもん。
やっぱり咲人は、私のことが好きだから――、
「その行為に、何か意味がありますか」
「………え?」
美しく冷たい瞳に、微かに侮蔑を滲ませて。
腕を掴んでいる私の手を、軽い動作で払う。
さっきから続けられるどうでもいいものを扱うような態度や眼差しに、今私を見下ろす表情に、……泥水でもかぶったような気持ちに落とされた。
(意味?)
………なにそれ、
「あ、…あるでしょ、あるに決まってるでしょ…っ、」
震える。
スカートに触れている手を拳に変えて、屈辱感で身体が小刻みに震える。
何も言わずに、私の言うことを聞けばいいの。
咲人は私の言う通りに、好きって言えばいい。
甘い言葉を囁いて、抱き締めればいい。
ただ、それだけじゃん。
なんで私の言うことを聞かないの…!!
なんなの。
この扱いはおかしい。
酷い。ひどい、ひどいひどい…!
「あの夜だって、私に何回も言って、」
「……好き、なんて気持ちがなくても言える」
人の心をかき乱すような美しい容姿で、
まるで彫刻された人形のように澄ました顔で告げられる言葉に、……身体が強張り、硬直する。
数秒、いや、数十秒は経ったかもしれない。
それほど、彼の整った薄い唇から吐き出された音の意味がしばらく理解できなかった。
「……は?」
零れる、中身のない疑問。
ようやく脳が処理を追いつかせたときには、氷漬けにでもされたのかと思うほど体温がなくなっていた。
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