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猫と少年のお遊戯
3
戸惑い、目的地不明になった意識は自然と白にゃんこの方に向かう。
「その偽物の猫に、夏空様はお優しすぎます」
オレの目線の先を追ったのか、嘆息する気配。
「以前にも申し上げたでしょう」と続ける声はいつもと同じで優しいのに、何か違う色が混じる。
「生きてはいません。ただ、よく似ているだけの紛い物です」
「……まがい、もの…?」
「どうやっても本物にはなり得ない」と、平坦な声が呟く。
「所詮紙で出来ただけの猫なのですから、夏空様にご命令をいただければどのようなことでも従います」
そう告げる薄く形の良い唇が、微笑む。
そのはずなのに整った顔には、冷えた感情しか感じられなくて…ひやり、と背中から手足だけでなく、全身の血が失われる心地がした。
身が竦むような、僅かに強制力にも似た雰囲気。
彼の優雅な仕草、視線の動きに少し遅れてつられるように、にゃんこの方に意識を戻せば、
さっくんが見ただけで、…目に映しただけで、びくんと身をすくませていた。
声を出して、こっちに来るように言ったわけじゃないのに。
全てを理解している、…というより、自分の意思がなくなったみたいに。
上から糸でつられて歩くマリオネットのように、さっきまでの態度と比較したら不自然に、…けど自然な動作でぽてぽて歩いて寄ってきた。
それから、目の前ですとんとおすわりをする。
撫でられるのを待っているみたいに頭を垂れた。
「………っ、…ぁ、……」
なに、なんなんだ、これ。
………こわい、
こわくて、たまらない。
今の動作こそ、今までにゃんこを見て感じたことがない……本当に、意思のない『リアルな玩具』の動き方だった。
「………も、……ぃい、…、から、」
どうにかして、絞り出す。
動きにくい頭を横に振り、否定を示しながら、干上がる喉をおさえつけた。
何故か、全身から血の気が引くような錯覚に襲われる。
わけがわからないけど、温度のない汗が肌を伝う感覚。
ふわ、と脳から血が薄くなって、眩暈に似た吐き気が込み上げる。
「……無理に、従ってほしいわけじゃ、ない」
にゃんこは、そこから動けずにいるように、まだ同じ場所で同じ姿勢のままだ。
数分前までそこにあった、生き生きとした目はまるで嘘だったみたいに虚ろで。
(……違う。こうしたかったんじゃない)
ただ普通に…触りたかっただけで、遊びたかっただけで、
………こんなふうに、にゃんこが望まない状態でしたかったんじゃない。
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