貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
247 / 369
猫と少年のお遊戯

3






戸惑い、目的地不明になった意識は自然と白にゃんこの方に向かう。


「その偽物の猫に、夏空様はお優しすぎます」


オレの目線の先を追ったのか、嘆息する気配。
「以前にも申し上げたでしょう」と続ける声はいつもと同じで優しいのに、何か違う色が混じる。


「生きてはいません。ただ、よく似ているだけの紛い物です」

「……まがい、もの…?」


「どうやっても本物にはなり得ない」と、平坦な声が呟く。


「所詮紙で出来ただけの猫なのですから、夏空様にご命令をいただければどのようなことでも従います」


そう告げる薄く形の良い唇が、微笑む。
そのはずなのに整った顔には、冷えた感情しか感じられなくて…ひやり、と背中から手足だけでなく、全身の血が失われる心地がした。

身が竦むような、僅かに強制力にも似た雰囲気。

彼の優雅な仕草、視線の動きに少し遅れてつられるように、にゃんこの方に意識を戻せば、
さっくんが見ただけで、…目に映しただけで、びくんと身をすくませていた。

声を出して、こっちに来るように言ったわけじゃないのに。


全てを理解している、…というより、自分の意思がなくなったみたいに。
上から糸でつられて歩くマリオネットのように、さっきまでの態度と比較したら不自然に、…けど自然な動作でぽてぽて歩いて寄ってきた。

それから、目の前ですとんとおすわりをする。
撫でられるのを待っているみたいに頭を垂れた。


「………っ、…ぁ、……」


なに、なんなんだ、これ。

………こわい、

こわくて、たまらない。

今の動作こそ、今までにゃんこを見て感じたことがない……本当に、意思のない『リアルな玩具』の動き方だった。


「………も、……ぃい、…、から、」


どうにかして、絞り出す。

動きにくい頭を横に振り、否定を示しながら、干上がる喉をおさえつけた。

何故か、全身から血の気が引くような錯覚に襲われる。
わけがわからないけど、温度のない汗が肌を伝う感覚。

ふわ、と脳から血が薄くなって、眩暈に似た吐き気が込み上げる。


「……無理に、従ってほしいわけじゃ、ない」


にゃんこは、そこから動けずにいるように、まだ同じ場所で同じ姿勢のままだ。

数分前までそこにあった、生き生きとした目はまるで嘘だったみたいに虚ろで。


(……違う。こうしたかったんじゃない)


ただ普通に…触りたかっただけで、遊びたかっただけで、

………こんなふうに、にゃんこが望まない状態でしたかったんじゃない。


感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。