貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
248 / 369
猫と少年のお遊戯

4





「解放してあげてくれ」とさっくんに言って、その体勢のにゃんこを見ていられずに背中を向けた。


「……夏空様、」

「にゃんこは、偽物じゃない」


ぷいと顔を背けたまま、反論する。
……今のさっくんは怖いから、面と向かっては言えなかった。


「触れば体温もあるしふわふわしてるし、息もしてて、気持ちで表情も変わる」


……手がふれたときの感触を、…撫でられて擽ったそうに目を瞑っていた時の顔を、今でもはっきり覚えてる。


「さっくんの奇跡みたいな魔法のおかげで、にゃんこは生きてるんだ」


口にすると、なおさらに実感する。

…そうだ。偽物なんかじゃないし、紛い物でもなければ、ただの紙を動かしただけの無機物でもない。

自分で動いて考えて、感情が持ってる…立派な生命体だ。


「今まで存在しなかった生き物が、この世に生まれた。それだって、さっくんがすごいからなんだぞ。こんなに特別なことができるのは、誰よりも神様に愛されてる証拠だ」


にゃんこのことでさっきみたいな言い方をされると、さっくん自身もそれをする自分を貶している…価値のないものだと言っているようで嫌だ。


「皆に自慢できる才能なのに、…所詮紙だからとか、紛い物とか言わないでくれ」


どうやって動いてるのか難しいことはわからないけど、ちいさい頃からさっくんはこういうことができたらしい。

それは他の誰にも真似できない、見てる景色をキラキラした素敵な世界にできる…魔法みたいな現実だ。

……そうやって、どうでもいいことみたいに言わないでほしい。


「だめですよ、夏空様」

「……ぇ?」


囁くような声音と吐息が耳に触れ、後ろから身体に腕が回される。


「そうやって誰にでも無自覚に…有毒な甘い言葉を仰るのは、貴方の悪い癖です」

「……オレ、…変なこと、言った…?」


抱き竦められる体勢で、身動きを取れなくされた。
その状態で、オレの疑問に肯定を示す。

……耳元で話されるのが苦手ってわかってるくせに。

わざとそうしているのか、吐息が耳をかすめるたびに、びく、と小さく震えれば、笑みを零す気配がした。


(……怒ってる、…?)

抱き締められたままで顔を見なくても、声音や雰囲気、背中で感じる、伝わる感覚で、…この直感は間違っていないと察した。


「純粋で無垢で、お優しすぎるあまりに、わかっていらっしゃらないことが多すぎます」

「…っ、何を、わかってないんだ」さっくんの機嫌を損ねてしまったらしいことにびびりつつも、そんなことない、とふるふる首を横に振る。


「オレは、ただ凄いと思ったから、」無意識に乾く唇。それを懸命に動かし、心のままに言葉にする。


「さっくんだけの特別な魔法をみせてくれるおかげで、いつも楽しくて、世界がキラキラして、…それに、何よりも、みせてくれる時のさっくんが一番……、キラキラ輝いて見えて、」


自分の陳腐な言葉では、表現では足りないもどかしさに、…ぐ、と悔しくて唇を噛む。


感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。