貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
253 / 369
ほっとけーき

2






オレの親に『買われた』ことについて、あれ以降さっくんは触れたがらなかった。


前に勉強したから、雇うと買うの言葉の意味の違いは知ってる。
恐々聞けば、オレの嫌な解釈の通り……想像している通りの悪い意味だということだけはおしえてくれた。

ほかのことは、「これ以上貴方の御耳を汚したくないので、言いたくありません」と拒絶の意志を示された。

それでも、今聞かないといけない気がして食い下がれば、「…困らせて、…申し訳ございません。どうかしていました」と目を伏せてはぐらかされて、何も言えなくなった。

さっくんにそう言われたら、…追及もできず、オレもいつも通り振る舞うしかない。

…のに、知らなかった頃には戻れないから、どうしてもぎくしゃくしてしまう。


(……そもそも、だ)


買われたって、どうして。

しかもそれ以前の問題もある。

執事が家にいるのは普通のことだって言われてたこともあって、今まで疑問に思わなかった。

……さっくんにも家族がいて、幼少期に住んでいた家や帰る場所があるに決まってるのに。

ずっとお家にいてくれるのはおかしいって気づける瞬間はいつでもあったのに。

本を色々読んでもらってるんだから、家族みたいに何も理由なく、見返りの無い人間に対して執事として長期間一緒にいるのはおかしいんじゃないかって察せれたのに。


(……酷いな、オレ)


……もしかしたらって思ってた。

さっくんはオレのことをいっぱい褒めてくれるから…もしかしたら家族以上に一番好きでいてくれてるから報酬もなしに傍にいてくれてるんじゃないかと期待したりして。


(勝手に落ち込むのは良くないってわかってる、)


……万が一、仮にそうだったとしても、どこでどう出会ったら今みたいな関係になれるのかと余計に難しい話になってくるんだから、尚更ありえない。


誰が好き好んで、お金で一生を買われてまで見ず知らずの人間の世話なんかしたがるんだ。

そうやってまともに…常識で考えれば、答えはひとつしかなくて。

けど、会社で働いている大人みたいに雇われてたわけじゃなかった。

それよりも、もっともっと酷い。

人間を買うなんて、どうやったらできるんだ。
倫理的にも、赦されることなのか。

今まで本に出てきた買われた人たちで幸せな話をみたことがない。
皆、本人の意思に反してそうされた人たちばかりだった。

……でも、オレの親はまるでそれが当たり前のことみたいに、『人間を買った』…?

そんなことができるはずがないと、冗談でも言っているんじゃないかと思いたいけど、あの時のさっくんの表情は、……それができないほど真剣だった。


(……両親を、………オレを、恨んでる…のかな)


そう考えること自体、今まで散々甘えてきた証拠なのかもしれない。

ずっと、さっくんが望んで傍にいてくれるんだと思っていた。

オレも願ってて、さっくんも同じように願ってくれてるから、こうして一緒にいられるんだと思っていた。


でも、……違った。

……さっくんは、『どんなに嫌でも、オレの傍にいるしかなかった』。


何も知らずに…知ろうともせずに世話をされて当然みたいな態度のオレに、嫌な感情を抱かずにいれるはずがない。

だから、こうして前にさっくんと作ったのを思い出しながらホットケーキを、


「…っ、とわっ、わすれてた!!」


飛び上がって、フランパンの中身をいそいでお皿の上にひっくりかえす。

「……あーーー」何度目かの真っ黒な物体が出来上がっていた。つついてみても、…もちろん黄色にはもどらない。…こんなの、食べられない。失敗作だ。

感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。