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ほっとけーき
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ケーキひとつで許されようだなんて思ってないし、……勝手だけど、身勝手なのはわかってるけど、
「さっくんが、だいすぎ、だ…っ、だいすき、なんだ…っ。すっごく、すごーく、だいすき、だがら…っ、おれ、…っ、お゛れ゛ぇ…っ、」
続きは泣きすぎて声にならなかった。
しゃくりあげながら、わめきたてていた口を閉じる。
だから、
(……オレを、おいていかないで)
ひぐ、ぅぐ、と腕で目元を隠しながら、泣いて震える。
怯えて、身体の震えがおさまらない。
こわい。こわい。こわくてたまらない。
どうして、今になって買われたってオレに言ったんだろう。
こんなにずっと一緒にいたのに。
今まで言わなかったのにいきなりあんな話をしたのは、オレが嫌になったからで。
にゃんこだけじゃなくて、さっくんも物扱いするなという無知の度がすぎるオレの言葉にさっくんはきっと怒って、限界だと思ったんだ。
買われても、そんなのは親との話で、オレが親に愛されてないってわかったから、だからもう買われたとかそんなの関係なくなって、今でもだめなままのオレに愛想が尽きちゃったんだ。
「夏空様」
「……っ、?!ぅ゛、ぅ、っ、ぇ…っ、」
なのに、
耳に届いたのは、予想していた声色じゃない。
悪いことをしたのに、悪いことをずっとしてきたのに、どうしてそんな声で呼ぶんだと、
それが余計に涙腺を刺激して、また涙の海に溺れる。
「…夏空様、俺を見てください」
「っ゛、や゛、…っ、」
号泣以上に泣きながら、嗚咽しか出ない。
ソファーの上で自分を抱き締めるような体勢で、顔を腕で覆ったまま首を横に振る。
ひぐ、っ、ひぐっ、と喉が痙攣しすぎて、まともに話せる状態じゃない。
「向いてくれないなら、出ていきます」
「ぁ…っ、ぇ………?、」
サー、と血の気が引く。
泣きすぎて火照っている全身から、血が失せる。
「…っ、ぅ゛え、…や゛ら゛、…、ま゛、…っ、」
待って、としゃくりあげながら子どものように駄々をこねようと、いそいで腕を顔からどけ、身体を起こそうとする。
と、腕をおろす前に掴まれた。
掴まれた手ごと、顔のすぐ横のソファーに押し付けられる。
……さっきの言葉は本気ではなかったのか。
とろけるような笑みを浮かべたさっくんの顔が近づく。
声を出す間もなく、唇を重ね、差し込まれた舌と混ぜ合わせられた。
「…っ、んん…っ?!ん…っ、ふぁ…っ、」
びっくりして嚙んじゃいそうになるのを堪えて、一生懸命受け入れる。
舌の輪郭を…形をなぞるような優しい動き。
お互いの熱い吐息と、煽情的にぬるぬる擦れる舌の存在感に反応して否応なしに頬が熱くなる。
「俺に嫌われて、…出ていくかもしれないのが怖くて、そんなに泣いてるんですか?」
「……ん、…ひ、ぐ…っ、う゛ん、っ、…」
「慣れない料理で怪我までして、汚れて…」
泣きながら頷いたオレの返答に、困ったような笑みを滲ませ、でも嬉しそうに目を細める。
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