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雪華(せつか)
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***
外の世界が純白に染まっていく。
はらはら、ぱらぱらと、小さなわたがしが金平糖のように降り注ぎ、幻想的な情景を魅せる。
するり、その世界に溶け込むように身軽な動作で庭に駆けていったにゃんこが、ぽて、と頭の上におりてきた結晶に目を瞑り、はしゃぎながらふるふるとしっぽと身を振る。
と、追いかけてこないことが気になったのかもしれない。
その瞳が、不思議そうにこっちを振り向いた。
お前はどうして来ないのかと、ここで遊んだら楽しいよとオレを見据える。
「ぁ、…っ、おれも」
行く、と声にする前に、床にへたりこんでいた身体を起こし、手を伸ばす。
にゃんこみたいに。
オレも走って遊びたい。
外で降り注ぐ雪を肌で受けて、駆け回って、季節を全身で感じてみたい。
誘われるままに。
あたたかいカーペットや室内のほかほかの空気、それらすべてを忘れて、
雪を浴びて足跡をつけるにゃんこの後を追うために
手で、『そこ』に触れて、
バチッ、!!
「ッ、ぁ゛あ゛っ、!!!?」
脳が、焼けたかと思った。
叫び、手をかばうようにして後ろに倒れた。
息さえ、うまくできない。
庭と家の中の境界線。
世界に出るための狭間。
何が起こったのか、理解するのに数分かかった。
大きな窓ガラスに阻まれたのだと、ようやく気づく。
触れた瞬間にやばいぐらい痛い電気が走って、燃えたのか凍ったのか、そんな錯覚に陥るほどの痛みが手から全身を襲った。
「っ、ぃ゛、いた…っ、ぅ、ぅ゛…っ、」
苦しい、痛い。
時間が経ってもまだビリビリ痛む感覚に、思わずぼろぼろ涙が零れる。
最近触ってなかったから忘れてた。
さっくんとの約束を守らずに外に出ようとしたオレが悪いけど、それでも、あまりにも酷い痛みに泣いてしまう。
『オレのため』にしてくれてる仕掛けだとは知ってるからこそ、それを忘れて触っちゃってこんなことになってるなんてばかみたいだ。
「……、ぅ゛、ぐ、」
キラキラしてる世界に行けなかったことか、
さっくんとの約束を破ろうとしてしまったせいか、
ただこのどうにもできない強い痛みのせいか、
笑われても言い返せないくらい、涙が頬を伝う。
床だんぼう?ってやつでぬくぬくとした床の上に寝転がったまま動くことができずに、届くことはなかった先程よりも白く染まった世界をむなしく見上げる。
そうしていれば、とてとて歩いて家の中に戻ってきたらしいにゃんこが、少し離れた場所から同情するような眼差しでオレを見下ろしていた。
「夏空様」
「……ぁ、」
聞きなれた声が耳に届く。
……優しく、抱き起こされた。
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