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雪華(せつか)
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しおりを挟む満足げに、ご機嫌そうに、唇で弧を作る。
「なら、言うことを聞けるな。にゃんこにはもう関わらないから、安心してさっくんはオレだけを見てろ」
「………っ、………はい」
「そうだ。素直なさっくんは偉いぞ」
わしゃわしゃとさっくんの髪を撫でる。
参考にするものなのかはわからないが、主従関係系の本(題名は思い出せないけど)にこんな感じの方法が好ましい雰囲気で書いてあった。
物は試し、ってやつだったけど、うまくいったみたいで良かった。
(…サラサラだなー…)
撫でれば撫でるほど綺麗な黒髪の感触が手に気持ち良くて、
…それにされるがままの、…さっくんの嬉しいけど微妙そうな、なんというか絶妙な表情が格好良くて可愛くて、見慣れないしでくすぐったいみたいな、込み上げてくる感情(衝動?)に襲われて、ぐうってなった。
ずっとよしよししてたくなるのを堪えながら、名残惜しく離して、…やっぱりもう1回撫でたいかもしれないって考えてたら、……あ、って不意に思いついた。
「さっき手冷たかったから、あっためてやる」
さっくんの手を両手で掴んで、ぴとっと自分の頬にあてた。
「にゃ、」つめたい、と己の行動で起こした結果にちょっとびっくりして声が出てしまった。
部屋に戻ってきて結構たつのに、やっぱりまだ全然だ。
「……っ゛、!!」
「どうだ?オレのほっぺた、あったかいだろ」
ずっと暖房がっつりつけてぬくぬくとした部屋でいたせいで(電流で倒れてはいたけど)、むしろ暑いぐらいだったからちょうどいい。
まだあったかくならないかなー、どうしたらあったかくできるかなって、さっくんの手のひらを頬にあてたまま、すりすりする。
すっごく寒いのにオレのわがままで、ケーキの材料のために外に買いにいってくれた。
「ありがとな」と心を込めて呟けば、「…、ぃ、え…、」と、聞こえるか聞こえないか曖昧な言葉が耳に届き、…手が離された。
「…っ、…死にそうです」
「?!大丈夫か?!やっぱり寒いのか?!……もし寒いなら、オレをぎゅーってしろ!」
「いえ、……いいえ、夏空様のおかげで充分すぎるほど温かくなりました」と僅かに震えている声音で囁いて、「…ですが、……お許しいただけるなら、抱きしめてもいいですか…?」「う、」ん、の頷き返したその返事と同じぐらいに、御礼の言葉とともに身体に腕を回して抱きしめられる。
深く、ゆっくりと息を吐いて、壊れ物を扱うように優しく、…だけど、離したくないとオレを閉じ込める。
ちょっとでもあったかくなってもらいたいのと、あといつものごとく、さっくんに抱き締められてる感覚とか、すらっとしてるのにオレよりも身長が高くてしっかりしてる身体の感触に安心して、ぎゅうううってし返して、もっともっとくっついて密着した。
その動きに応えるようにオレを抱いている腕に力が入る。
……ああ、やっぱりさっくんにこうされるの好きだな、って…、縋るように強く抱き締められながら、全身を満たすような上品で優しい香りに思考が蕩けちゃいそうになった。
肩の肌触りの良いコートの柔らかな生地に頬を触れさせ、それからその白く透明感のある首元に顔を寄せる。
(…落ち着く……、気持ちいーなー…)
甘える感じの動作になってしまっているのを自覚しながらうずめていれば、耳元で笑みを零したような吐息が触れる。
「嗚呼もう…さっきから為されることすべてが可愛くて仕方がないのですが、……どこで覚えてくるんですか?」
「…む、」
オレの行動を真似するように、優しく手をとって持ち上げられ、彼の頬に添えられる。
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