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雪華(せつか)
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だけど、本当は言われること自体が嫌なわけじゃない。
「……夏空様、?」
気遣うような声に、…口を噤む。
…少しためらって、…それから、ぶんぶん首を振った。
「怖いんだ」
ここまで言ってしまったら、はぐらかす方が良くないだろうと、…以前から思ってたことを正直に白状した。
「可愛いって言われて、でも…それってよくさっくんが褒めてくれるオレの外見がって話じゃないだろ?だから、そういう、のだから、余計に…可愛いって言われなくなった時のことを考えると、…怖くなる」
男なら言われないのが自然で、当たり前なのに。
こうもいっぱい言われ慣れてしまうと、その言葉が消えたことに気づいた時に、きっと…傷つく気がした。
「……怖い、ですか」
「まぁ、ちょっとな。ほんのちょこっとだけだけどな」
今更だけど、体裁を取り繕おうと腕を組んでそっぽを向く。
別に気にしてるわけじゃないけど、と口に出してしまったことで取り返しはつかないのに惨めにも自分を守ろうとする。
「…かなり甘やかしてきたつもりなのですが、何故そんなに自信がないんでしょう」
「……そう、なのかな」
自信がないとは思ってなかった。
さっくんが何でもしてくれるし、ちょっとしたことでもたくさん褒めてくれるから、…多分人並み以上には自分を肯定できている…と思う。
「普通なら、貴方ほど甘やかされ、可愛がられて生活していれば…もっと違った性格に育つと思いますよ」
「…そういうところまで、似てしまうものなんですね」と独り言のように、小さく零れ落ちる声。
それは、哀絶にも空虚にも取れる響きを滲ませた声色で。
「似てる?」
誰に?
彼はその問いに対する答えをはぐらかすように、曖昧に微笑んだ。
けど、だからこそ…かもしれない。
(…さっくんに可愛がられてきた自覚があるから、じゃないのか)
先日のさっくんの言葉を真似するわけじゃないけど、
あの言葉通り、オレにとってはさっくんが誰よりも他の何よりも大事で、絶対に失いたくない人だ。
オレの自信は、さっくんが与えてくれた肯定だから。
だからこそ、さっくんという存在がオレにくれる特別な価値が失われてしまったら、きっとオレの自己への肯定はいとも簡単に崩れてしまう気がした。
(……けど、さっくんは違う)
もしかしたら、オレにもそれと同じような意味で思ってくれているかもしれない。
でも、それはオレにだけじゃなくて。
オレだけじゃない、命に代えられないような恋人が他にいて。
だからこそ、確実な契約を結んでるわけでもないオレは、さっくんにとって絶対に一緒にいないといけない相手じゃなくて。
だから、オレがいなくなっても、まだ……その人が、いるじゃないか。
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