貴方は俺を愛せない

和泉奏

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「…見つけた」

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……

……………


あの後、さっくんにいたずらというか、エロい…ことをされたのを、…近くに座っていた人に見られてて、その場にいられない状況になった。

それから、いるかしょーを見に行って、ぴょーん!って飛んだりぱしゃん!って潜ったり、舞うように泳ぐイルカに大興奮で拍手しまくった。

待ち望んでたシロクマもどっしり、もくもくごろんって感じてすごいもふもふ可愛かった。

さすがに歩き回って疲れてきたのと、今度は人目が少ない場所にしようと、…室内にアクアリウムがついてるレストランの個室に来た、…んだけど、



「………………」


(……なんで、)


オレではなく、心ここにあらずといった雰囲気で水槽の方を向いている整った横顔。

無表情を装ってるけど、…今日ずっと、…多分違うことを考えてる。

誘われるのに疲れたという雰囲気でもない。

「…さっくん、」と、遠慮がちに声をかける。1度では気づいてもらえずに、…また、名前を呼んだ。

数回もこうなると、さすがにどうしたんだと問いただしたくなってくる。

いつもなら、絶対にすぐ返事をしてくれるのに。
腰を上げ、手を伸ばして裾を引っ張る。


「何か、気になってるだろ」


それは、間違いない。
毎日さっくんと一緒にいたオレだから、わかる。

本音をいえば、水族館の話が出てから今日まで、日にちが近づけば近づくほど、気がかりなことでもあるのか、…さっくんにしては珍しく、態度に出ていた。

……少し悩んだのち、…意を決して提案する。


「する?」


主語がなく問いかけたオレの言葉に、当然ながら「何をですか?」と聞き返される。


「キス」

「………――え……、?」


二文字の単語を口にすれば、不意を突かれたように軽く開かれる目。

今なら、幸いにも人目はない。
もしかしたら監視カメラぐらいはあるかもしれないけど、さっさと済ませば問題にはならないだろう。


「よくわからないけど、…不安なんだろ?」


さっくんがそういう雰囲気を醸し出してると、オレも心臓がぎゅってなる。

いつものそういう時ともちょっと違う気がしたけど、はやくいつも通りに戻ってほしくて。
そういうときは、いつもオレにしたがるから、今回もこうすれば大丈夫だったってはやく安心したくて。

……けど、「いえ、」と彼は首を横に振った。


「お気遣いありがとうございます。ですが、ご心配には及びません」

「……」


「俺は、いつも通りですから」と呟いて口元を緩めるさっくんに、愕然とした。気が動転して、言葉を失う。

……さっくんに、拒まれた。

それも、明らかな嘘を吐いて。

察して、…きゅう、と胸が締め付けられて、苦しくなる。

今いる場所は家じゃないし、…そもそも絶対にしないといけないことでもないから。…別にいいんだけど、……今のは線を引かれた気がして、…結構傷ついた。


「それより、」と彼の声がしても、顔を上げられない程度には打ちのめされていた。


「こうなるなら、水族館を貸し切りにすればよかったですね」

「簡単にその発想に至るな。…そもそも、最後のはさっくんが…あれを、…舐めたり、とかしていじわるしてきたのが悪いけど、…他のことまではさすがに予想できなかっただろ」


水族館をみてまわるだけで、見世物みたいにあんなにみられると思うはずがない。
それに、オレたちのためだけに貸し切りにするのは、他の人達に申し訳ないしな。

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